賃金が減り続けているのに格差は縮小。貧困もみんなで渡れば怖くない
バブル崩壊後の30年間で日本は雇用形態が不安定化し、すっかりと貧しくなったと感じる人は多いのではなかろうか。私はそう感じます。
有名大学を出ても正社員にすらなれなかったりして、まるで発展途上国にでもなったかのようです。
ところが、ここ20年ほどで日本人の格差は縮小しているというのです。いったい本当なのでしょうか。
格差は意外にも縮小傾向
以下は平成17年(2005年)から平成29年(2017年)にかけてのジニ係数の推移です。
(出所:厚生労働省)
たしかに所得再分配後のジニ係数はわずかではあるものの減少しているようです。
ただし、税金や社会保障費などを考慮する前だと右肩上がり傾向であり、所得格差の拡大を税金などにより防いでいるという姿が浮かび上がります。
頭を混乱させる事実
再分配後のジニ係数が低下しているといって、世の中が豊かになっているとはとても思えない。
いったいどういうことなのかと頭が混乱してきます。
なにしろ2005年よりも2020年のほうが名目賃金が低いのですから。
(出所:ニッポンの数字)
1人当たりの賃金が下がっただけで、共働きが増えたために一世帯当たりの所得が増えているのではないかと考えたのですが、どうやらそうでもないようです。
(出所:厚生労働省)
実質賃金はさらにひどい
名目賃金は物価の推移を考慮していない、純粋にサイフに入ったお金ですが、物価上昇率を考慮した実質賃金となるとさらに悲惨です。
(出所:ニッポンの数字)
2005年から2020年にかけて約1割低下しており、国民の生活レベルが1割低下したと考えることができます。
異常な長期停滞
この流れは2005年に始まったわけではありません。
以下はバブル崩壊がスタートした1990年から2020年までの実質賃金推移です。
(出所:ニッポンの数字)
1996年をピークにひたすら下がり続けており、こんな国は見たことがありません。異常です。
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GDP成長急停止
いったいなぜこんなことになったのか?
それはひとえに日本が経済成長しなくなったからの一言につきるのであります。
以下は戦後から立ち上がった1960年から2020年までの名目GDPの推移です。
(出所:ニッポンの数字)
1990年代半ばでGDPの伸びがピタッと成長が止まっていることがわかります。この時期に実行された数々の政策が失敗だったことは間違いありません。
消費税の増税などは典型例だといえます。
これにより日本人は豊かさを失いつつあるということです。
中流階級はまったく減っていない
それにしても不思議なのは日本では中流意識を持つ人が全くと言っていいほど減っていないことです。上流を含めればむしろ増えています。
(出所:社会実情データ図録)
所得が減少しているのにいったいなぜなのか。理解に苦しみます。
憶測の域を出ませんが、やはり全体が等しく没落しているとしか思えない。
豊かさといった抽象的な概念は他人との比較の中でしか行うことはできません。
皆苦しんでいるのだから自分も苦しんで当然であり、したがって自分も中流だという考え方で中流階層の比率が減少していないと考えられます。
政府はひたすら緊縮財政を推し進めつつ、社会の騒乱を防ぐため、1億総貧困化政策を取っているとしか考えられません。
最後に
本来気にすべきは他国の状況でしょう。
日本は島国だし、外国語を話せる人も少ない。よって、海外の事情には疎くなりがちだといえます。
日本の中だけで考えれば中流だと思っていたら、世界標準で見たら下流だったという可能性を十分に秘めているといえるでしょう。
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