東証再編が上場企業の非上場化を加速する

えっ、こんな小さい会社が東証1部上場なの?などということはよくあることです。
上場を維持するための基準が低いため、会社の規模が小さくなっても東証1部へ上場し続けることが可能なためです。
しかし、これでは国際的に体裁が悪い。米英などに比べて歪な市場に見え、流動性の面からも問題があるということで市場の再編が検討されています。
しかし、その再編案が上場企業の非上場化を加速させる可能性があるのですから皮肉です。
上場企業が抱える危惧
なにしろ、金融庁や東証、証券会社などは東証1部のプレミアを高めようとしています。東証1部という名称も「プライム市場」などと変更される見通しです。
プレミアを高めるためには、弱小企業は切り捨てざるを得ない。しかし、切り捨てられる企業はたまったものではありません。東証1部という箔がはがされてしまうのですから。
プライム市場に残れなかった企業はその下のスタンダード市場へ格下げされることになります。企業にとっては東証1部から2部に格下げされたも同然なのです。
(イメージ図)

しかし、プライム市場に残るには高いハードルを越えなければなりません。高い時価総額を維持したり、一定の流動性を保ったり、英文開示をしたり・・・。
かなりのコスト負担が求められることになるのですから頭が痛いというのが実態です。
危惧を解決するための手段
こんなことならいっそのこと上場をやめてしまおうと考える企業が増えてきています。
そのために検討されている手段がMBO(マネジメント・バイアウト)(※)です。
非上場企業になれば、株主による強い圧力からも解放され、短期的な視野での経営をしなくてもよくなります。
すかいらーくやCCCなどもMBOにより非上場化したと記憶しています。非上場企業となることで、ある種非合理的な投資行動をとることも可能になります。そして、長期的視点に立てばそれが正しい決断であるかもしれないのです。
(※)MBO(マネジメント・バイアウト)
会社の経営陣が、自社の資産や将来のキャッシュフローを担保として投資ファンド等からの出資や金融機関からの借入れなどによる資金調達をして自社の株式を買い付けるM&Aの手法。
会社の経営陣が、自社の資産や将来のキャッシュフローを担保として投資ファンド等からの出資や金融機関からの借入れなどによる資金調達をして自社の株式を買い付けるM&Aの手法。
MBOを検討する企業
ここ最近、金融機関に対するMBOの相談件数が増加傾向にあるようです。
ある信託銀行ではMBOの相談件数が昨年の数倍になっているといいます。それらの多くは時価総額が数百億円程度の中堅企業です。
プライム市場に残れるかどうか微妙な企業からの相談が増えていると見て間違いなさそうです。
金融機関がMBOを後押し
長引く低金利にあえぐ金融機関にとってもMBOによる融資はおいしい話なのです。
MBOに必要な資金を貸し付ける際の金利は、運転資金の貸付よりも高く、利ザヤが大きいからです。
プライム市場への上場維持があまりに厳しい基準となれば、MBOによる非上場化を目指す企業が相次ぐことになるでしょう。四半期決算などという株主からプレッシャーから解き放たれ、自由闊達な事業経営ができることは経営者にとっても従業員にとっても大きな魅力です。
以下は日本取引所グループ(JPX)に上場している企業数の推移です。

基本的に右肩上がりとなっていますが、リーマンショック後に減少していることがわかります。
要因は主に3つです。1つは倒産の増加、1つは新規上場企業の減少、1つは企業買収です。
東証がグローバル化を急げば、リーマンショック時同様、そのしっぺ返しを食らう可能性が十分あります。
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