世界大恐慌。飢えで苦しむ人がいるのに農作物は廃棄するという矛盾

ニューヨーク



1929年、1924年から続いたアメリカ株式市場の暴落が引き金となり、世界は大恐慌(超デフレ)に突入していきました。

恐慌前、アメリカの失業率はわずか3.2%であり、ほぼ完全雇用が達成されていたのです。しかし、1933年には失業率が24.9%にまで跳ね上がり、4人に1人が失業者という悲惨な状況に陥りました。



恐慌による物価下落


恐慌による超デフレ現象で、物価は1929年を100とすると、1932年には68まで下がってしまいました。

しかし、物価が安くなる以上に所得が減少していくため、物価が安くなってもモノが買えないという矛盾にぶち当たります。国民総生産(GNP)は1929年から1933年までに45%も落ち込んだのです。

都会のアメリカ人は、貧困と飢えに悩まされ、飢えで失神する人が相次ぎました。しかし、その一方で農作物が売れなくて余ってしまい、ブルドーザーで踏みつぶすという理解しがたい現象が起こるのがデフレの恐いところです。

モノが買えないのは同じだが・・・


モノがなくて値上がりし、買えなくなってしまうインフレは理解がしやすいのではないでしょうか。コロナ騒動当初のマスクが典型的です。

しかし、マスクが有り余っているのにお金がないから買えないというのがデフレです。

マスクが手に入らないという事象は同じでも、マスクが店頭に並んでいるのに貧乏で買えないというのですから、むしろ悲劇的です。

デフレ中毒の日本


世界大恐慌時ほどではないにせよ、似たような現象に長年悩まされているのが今の日本です。

以下は日本の消費者物価指数の推移です。

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(出所:社会実情データ図録)

消費税を3%から5%に上げ、財政構造改革法が可決したデフレ元年の1997年以降、日本の物価は良くて横ばい、悪ければ下落が続いてきました。

世界経済の成長から取り残されていく姿は以下のグラフを見れば明らかです。

20200907GDP.jpg
(出所:社会実情データ図録)

日本はオレンジ色ですが、日本は1997年以降、ほとんど世界経済の成長に寄与していないことがよくわかります。世界でも突出した低成長を続けています。

そのうえ、グローバル投資家の意に沿った形で労働分配率が下げられたため、実質賃金は見事なまでの右肩下がりで、国民の財布は軽くなるばかりなのです。

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(出所:「新世紀のビッグブラザーへ」三橋貴明氏ブログ)

モノはあふれていても買えないデフレスパイラル


モノは店にこれでもかと並んでいるにもかかわらず、欲しいものがなかなか買えない。

所得が減少しているから当たり前です。そして、モノが売れないからますます安くなる。するとその店の店員の所得も減って、欲しいモノが買えなくなる。そして、他のモノの値段も下がる。

この負の連鎖がひたすら20年以上も続いてきました。

次期政権はデフレ克服を・・・


この連鎖を断ち切るには国民の所得を増やすしかありません。国民の財布は軽くなってしまっているので、政府が大規模な公共投資を行って、民間企業ひいては個人にお金を回していくしかありません。

また、モノを消費しやすくするように消費税を減税あるいは一時凍結する必要もあるでしょう。

経済がうまく回っていくにはマイルドなインフレが望ましく、それがわかっていたため、アベノミクスではインフレ目標を2%に設定しました。

しかし、公共事業は減らすわ、消費税は増税するわ、でデフレを解決する気など毛頭なかったとしか思えません。

次期政権は菅政権誕生が有力視されておりますが、肝心の菅氏がアベノミクス踏襲などと言っておりますので、デフレからの脱却は当分先になるというのが個人的見解です。

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