非顧客本位の回転売買に「ノー」。金融庁が監督指針に明確化

とかく人が好くて、資産をたくさん持っている高齢者は金融機関のカモにされがちだと言ったら言い過ぎでしょうか。
金融庁は、顧客本位ではない、むしろ金融機関本位の手数料稼ぎである「回転売買」について規制すべく、金融機関を監督する際の羅針盤ともいえる監督指針にその旨を明記する方向です。
近々、パブリックコメントを募集し、2020年中にも改正する見通しです。収益環境の悪化に苦しむ証券会社、銀行などの金融機関にはまたまた厳しい規制が課せられることとなりますが、顧客保護という観点からは望まれる改正であり、むしろ遅きに失した感もあります。
現状の問題点
金融商品取引法の下では、顧客の知識、経験、財産の状況および契約締結の目的に照らして、不適当な勧誘を行ってはならないとされております。いわゆる「適合性の原則」です。
しかし、これは社会通念の世界でもあり、何かトラブルがあったとしても、個別具体的な検証が必要でした。
具体的にどのような勧誘方法や販売が規制されるのかが明確ではなかったわけです。そのため、よほどのケースでなければ行政処分にまでは至らないという問題がありました。
新監督指針に変わるとどうなるか
新たな監督指針では、目線合わせのために一定の基準を指し示すことで、違反行為が明確となります。
具体的なバーが示されることで、侃々諤々の議論をすることなく、金融当局は違反した金融機関には直ちに業務改善命令を出すなど行政処分がし易くなります。
今まではグレーのまま処分できなかったような事例がブラックと認定されるケースが多発することになりそうです。これは金融機関の社員への抑止力ともなります。
さらに踏み込んだ指針案も
新たな監督指針では、回転売買のほかにも、顧客の年齢や職業などの属性やリスク許容度などに鑑みて、手数料が高すぎたり、リスクが大きすぎる商品を勧誘する行為なども不適切であると明記する方向です。
金融商品というものは業者と顧客との情報格差が大きい。だから、それを悪用した不適切な勧誘が頻出してきました。
しかし、今後そのような行為はさらに締め出されることになりそうな気配であり期待されます。
監督指針改正の引き金を引いたのは?
今回の改正は、明らかに日本郵政グループによる数多の不適切勧誘がきっかけとなっていることは疑いようもありません。
高齢者への投資信託販売時におけるルール無視、保険販売におけるコンプライアンス度外視はもはや常軌を逸したレべルに達していました。
金融庁の金融審議会でのワーキンググループによる議論が報告書となり、これを受けての監督指針改正という運びなのです。
企業は生き残るために収益を追求しなければならないとはいえ、人を貶めていいわけがありません。その意味において、今回の監督指針改正は非常に前向きな話だといえそうです。
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