PPIH(旧ドンキHD)前社長に不正疑惑。最大の焦点は・・・

昨年(2019年)夏のことだったと思います。飛ぶ鳥を落とす勢いで成長を続けてきたPPIH(旧ドンキホーテHD)の社長が退任しました。退任する社長はPPIHがアメリカ市場を開拓するために、アメリカ市場を統括する会社の社長になるはずでした。
しかし、同年9月下旬には同社長はPPIHを去っていたのです。アメリカへ渡ると発表されてからわずか1か月あまりの出来事でした。
その後、前社長は自ら新ビジネスを立ち上げたようですが、PPIH退職後1年あまり経った後、PPIHの株取引について不正取引に関与していたのではないかという報道がなされたのです。
社長退任後の不可解な動きと不正取引関与疑惑との間に関連があるのかはまったくわかりませんが、当局の強制調査の時期と極めて近く、興味をそそらされずにはいられません。
疑惑の概要
一昨年の2018年初秋、旧ドンキHDはユニー・ファミリーマートHDの子会社であるユニー株をユニー・ファミマHDから全株取得すると発表しました。
その一方で、ユニー・ファミマHDはTOB(株式公開買付)でドンキHDの株式を20%取得する予定でした(TOBは失敗)。
これらの会社再編計画を知っていたドンキHDの前社長が、知人にドンキHD株の購入を不正に勧めていたのではないかという疑惑が取りただされています。
なお、報道では一貫して「前社長」という表現が使われています。あくまで疑惑段階だからであろうと推測しますが、上場企業の社長であったという立場上、誰であるかはすぐにわかります。
金融当局による調査
証券取引等監視委員会が昨年(2019年)11月および今年(2020年)夏に、金融商品取引法(以下、金商法)違反容疑で関係先に強制調査に入りました。
疑惑の対象となっている行為は、ドンキHDの前社長が前述の会社再編に関する情報が一般に公表される前に知人に話し、株の購入を勧めたのではないかということです。
知人は情報公表前後の株式売買で多額の利益を得たとみられています。証券取引等監視委員会は知人やその親族ら複数の名義での株の買付けの記録を確認済のようです。
金商法違反に該当する可能性
金商法は、株価に影響を与える重要事実やTOBなどの実施を知りながら、第三者に利益を得させる目的で未公表の情報を提供したり、株式取引を勧める行為を禁じています。
重要事実などの情報伝達、株取引の推奨行為は金商法改正により、2014年に禁止されているのです。
金商法改正の背景
ではなぜ金商法は改正されたのでしょうか。
きっかけは「増資インサイダー問題」です。ある会社が公募増資をすることとなった場合、それを知った証券会社が顧客である機関投資家に事前にその事実を伝えるような事案が連発しました。
公募増資をすると市場に流通する株式数が増えて、1株利益が減るのが一般的であり、株価が下がることが多いのです。
情報を受けた機関投資家は、その会社の株を持っていれば先に売ってしまうでしょうし、買おうとしていたならば見送ることになるでしょう。
このような場合、情報を受け取って取引をした機関投資家を罰する規定はありましたが、情報の伝達をしたり、取引を勧めた側を罰する規定がなかったのです。
違反した場合の罰則は、懲役5年以下もしくは500万円以下の罰金またはその両方となっており、決して軽い罪ではありません。
時系列推移
話がややこしいというか、時系列での推移が非常に重要な焦点となりますので、簡単にまとめてみたのが下図です。

前社長の主張
前社長が日本経済新聞の取材に答えています。回答内容で前社長の重要な主張は以下となります。
・TOB公表前に知人と面会したが、その時点でTOBの実施は未決定であった
・情報伝達も株取引の推奨もしていない
・情報伝達も株取引の推奨もしていない
疑惑を全否定しています。
ただ、2018年8月10日の決算発表後、材料出尽くしで株価が下落し、なぜ下がるかという思いからドンキHDの株価が割安だという趣旨のことは言ったかもしれないとしています。では、2018年8月10日前後の株価推移はどうだったのでしょうか。

株価推移を見る限り、決算発表日は下げているものの、その後は決算発表前を上回っており、今ひとつ説得力に欠けます。なぜ上がらない?という思いならわからないでもありません。
ちなみにTOB実施公表の翌営業日(2018年10月12日)には株価は終値で6,880円まで上昇しています。
白か黒か、最大の焦点は?
さて、今回の嫌疑について白か黒かの分水嶺はどこにあるのでしょうか。焦点は以下に集約できると思います。
・2018年8月16日(知人との面会日)の段階で、実質的に両社の間に会社再編の合意がされていたか
です。
既に水面下でドンキHDとユニー・ファミマとの間で会社再編について、事実上の決定がなされていたならば黒となる可能性が高くなりますし、白紙状態であれば、単に愚痴や感想を漏らした程度の話ということになると思います。
時系列の図でいえば、②の会食時に④や⑤が実質的に合意されていたかということです。
最後に
懲役刑まで用意されている重大な罪であるからして、疑わしいは罰するなどということが許されるはずがありません。
証券取引等監視委員会は押収資料をもとに、両社の合意形成がいつだったのかを示す資料を調べているはずです。強制調査からかなりの日数が経過していますから調査は相当に進んでいるはずです。
PPIHは報道を受け、2020年10月29日にプレスリリースを出しています。それによれば、2019年11月に証券取引等監視委員会の調査が開始されたが、同委員会の要請により公表を控えていたそうです。
そしてPPIHは同委員会の調査で初めて本件嫌疑を知ることになったとも書かれています。
また、本件は前社長個人と知人に対する嫌疑であり、他のPPIH役職員の関与はないと表明し、今後の調査に全面的に協力するとしています。今後の動向に目が離せません。
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