零細ファンドが放置され続ける意外な理由

日本には6,000本を超える投資信託があります。しかし、運用資産が10億円にも満たないファンドが約1,500本もあるといいます。
このような零細ファンドはコストばかりかかり、運用会社にとっても、投資家にとっても不利益となるだけです。
そのため、投資信託も事業会社同様、統合が可能となりました(2007年)。そして、さらに手続きを簡素化するために2014年は法改正もなされています。
しかし一向に統合は進みません。そこには意外な理由があったのでした。
雨後の竹の子のようにファンドが増える理由
それにしてもなぜこんなにもファンドが増えてしまったのでしょうか。キーワードは「テーマ型ファンド」です。
世の中の流行に合わせ、次々とファンドが組成されていきます。最近であれば、「5G」や「AI」、「ESG」「SDGs」などが代表的だと思います。
テーマ型ファンドが次々と産み落とされるのは、ひとえに販売会社が売りやすいからです。そして、さらなる理由として、高い販売手数料や信託報酬が正当化できるからにほかなりません。
そして、流行遅れとなった過去の遺物ともいうべきテーマ型ファンドの解約を勧め、新たなテーマ型ファンドの購入を勧めるというわけです。
世の中の流行に合わせてファンドを乗り換えさせ、手数料を稼ぐために都合の良い構図なのです。もはやビジネスモデルとしてシステム化されているといっても過言ではないでしょう。
当然、顧客にとってはマイナスの方が大きくなることは言うまでもありません。
なにしろ、販売会社がテーマ型ファンドを勧めてくる時期は流行の末期であることがほとんどだからです。また余計な手数料をとられることにもなります。まるでトランプのババ抜きのようなものなのです。
金融庁のお叱りで少々反省の色も
こんなビジネスモデルが許されてよいわけがありません。金融当局もあからさまに問題視するようになってきました。そして、金融業界は当局の態度には非常に敏感です。明らかにここ最近、新設ファンド数は減少してきました。
以下は、年毎の新設ファンド数の推移です。

(投資信託協会のデータを基に作成)
明らかにここ数年、右肩下がりとなっています。金融当局への忖度度合いが手に取るようにわかります。
零細ファンドの統合が進まない理由
零細ファンドが跋扈すれば、運用会社にとってはコストに見合わない労力が必要となりますし、まともな運用などしてくれるはずもないのですから投資家にとっても、他のファンドに統合するなりしたほうがお互いに利益となるはずです。
ところが統合が遅々として進まない。そこには販売会社の思惑があるようなのです。運用会社が零細ファンドを統合しようとしても、販売会社がそれを渋るのです。なぜか?
ファンドが統合するとなれば、会社の合併同様、統合の比率をはじき出さねばなりません。
そして、統合されるファンドの保有者には、その根拠となる数値を説明することが必要です。しかし、説明をするといかに現状、損失が発生しているかがあからさまになってしまうのです。
そして、クレームにつながったり、取引を止めたりする顧客が出てくるのを恐れているのです。今さら寝た子を起こしたくないというのが販売会社の本音だということです。
最後に
欧米の真似事をしても、仏作って魂入れずとはまさにこのようなことをいうのでしょう。
当局の思惑とはかけ離れた理由で零細ファンドの統合が進みません。顧客本位の営業という掛け声もそのうちにまたかき消されることになりかねないというのが金融業界の実態のようです。
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