金融庁に加えて日銀も地方銀行の合併を迫る

「地方の銀行は数が多すぎる」と菅首相が語ったとか。菅首相がそのような見識を持ち合わせているとはとても思えず(失礼)、誰かの受け売りであろうと確信するのであります。
しかし、一国の首相の発言は重い。携帯電話会社の次は地方銀行か?と下衆の勘ぐりを入れたくなります。そして、それを後押しするかのように日本銀行が新たな制度を導入するというのです。
地方銀行への再編圧力の背景
近年、金融庁による地方銀行の再編圧力は高まっておりました。それにはいくつかの要因がありますが主なものは以下の3つです。
・超低金利政策による銀行の収益基盤の脆弱化
・銀行の体力低下による貸し渋りの回避
・地方人口の減少による収益の悪化
・銀行の体力低下による貸し渋りの回避
・地方人口の減少による収益の悪化
放っておくと銀行が倒産して、金融システムへの信頼が揺らぎ金融恐慌を招きかねないという当局の危機感が背景にあるものと考えられます。
日銀による新制度の導入
金融庁の再編圧力に加え、2020年11月10日、日銀が地域金融機関を支援する新制度の導入を発表しました。
その目的はもちろん地域金融機関の合併を主たる施策とし、経営改善努力を促すことです。目の前にあめ玉をぶら下げて、合併を促そうというある種、姑息な手段です。
その中身を具体的に見ていきましょう。
新制度の内容
日銀は2020年度から2022年度からの3年間に限定し、地域金融機関が日本銀行に開設する当座預金に年0.1%の金利を上乗せするというのです。しかし、それには2つの条件があります。
1.経営統合を図ること
経営統合へ向け、具体的に動き出す必要があります。具体的には2023年末までに機関決定をするとともに、日銀がそれを効果的であると認めることが必要です。
2. 収益力向上を図ること
本業の粗利益に対する経費の割合を改善させることが条件です。具体的には4%以上向上することが条件となります。
経営統合へ向け、具体的に動き出す必要があります。具体的には2023年末までに機関決定をするとともに、日銀がそれを効果的であると認めることが必要です。
2. 収益力向上を図ること
本業の粗利益に対する経費の割合を改善させることが条件です。具体的には4%以上向上することが条件となります。
新制度導入による銀行のメリット
さて、新制度を導入することで地域金融機関はどの程度のメリットを享受できるのでしょうか。
全ての地方銀行、信用金庫が0.1%の上乗せ金利を受けた場合、年間400~500億円の利子を上乗せで受け取ることができるといいます。
2019年度の地方銀行と信用金庫のトータルの純利益は9,000億円ほどとなっており、決して小さな金額ではないとはいえ、大きいとはとてもいえません。
日銀としては、ニンジンをぶら下げたつもりでしょうが、あまりにも小さなニンジンであり、目に見えないほどですから、これをもって金融機関の再編が進むとは思えません。
金融庁による追加支援も
日銀の新制度に加え、政府(金融庁)も地域金融機関の合併に対し補助金を交付するという大胆な案を出してきました。
地方銀行や信用金庫が合併あるいは経営統合をした場合、国がシステム統合費用の一部を負担するといいます。国が負担するといっても税金で賄うわけではありません。政府が資本参加している預金保険機構の利益剰余金を財源とするということです。
現状、350億円程度の剰余金があり、最大10件程度の統合支援ができそうです。
金融機関の統合で特に負担となるのはシステム統合費用。一般的に100億円程度の負担が必要となるケースが多いようです。この一部を国が負担することで、再編を加速させたいという狙いです。2021年夏にも創設できるよう国会で審議される予定です。
そもそも日本の銀行は多いのか
そもそも、日本の地方銀行は本当に多すぎるのでしょうか。日本の金融機関は、メガバンクから信用金庫や信用組合まで足して600行弱ほどです。
日本の2倍以上の人口であるアメリカでは7000行弱、日本の人口の約3分の2のドイツでは2000行弱となっており、数だけを見ればむしろ少ないというのが実態です。
銀行というと護送船団方式で横並びというイメージが今だに染みついており、そのイメ―ジから根拠なく語られていると思えてなりません。地方銀行がいかに地方経済を支えているかが以下のグラフでわかります。

(出所:社会実情データ図録)
最後に
2020年11月27日には同一県内の地方銀行の統合を独占禁止法の適用除外とする法律が施行されます。しかし、同一県内に一つしか地方銀行がなければ、消費者は弱い立場に置かれることになるのではないでしょうか。
一時の苦しみから解放されるために打った手が、長期的には消費者の利便性を損なう可能性があることを当局は認識する必要があると思います。
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