実はちっとも新しくなかった現代貨幣理論(MMT)

本



アマゾンのマクロ経済学部門でベストセラー第1位(2020年11月26日現在)となっているのが、現代貨幣理論(MMT)の提唱者の一人、ステファニー・ケルトン教授の『財政赤字の神話』です。

レビューは★5点中、4.5点とかなりの高評価を受けています。レビュー数も40であり、それだけのレビュー数で★4.5点は実質満点に近いと思います。そして私もスローペースながら現在読み進めている最中なのです。

まだ序盤ですが、その中にMMTの基礎ともいえるような理論を見つけました。しかもそれは1940年代に主張されたものだったのです。

個人的にはMMTよりも現実的であり、かえって優れているのではないかと思えるほどなのです。



ラーナーの機能的財政論とは


書の中で見つけたのは「機能的財政論」というものです。理論の生みの親は経済学者、アバ・ラーナー(※)です。

機能的財政論の肝はいかに需給ギャップを埋めるか。

今現在、世界でもっともマイナスの需給ギャップ(需要不足)に苦しんでいるのが日本です。需要が少なすぎてモノの値段が上がらないというデフレにもはや20年以上も苦しみ続けています。

以下のグラフを見ればそれは明らかです。

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(出所:社会実情データ図録)

1990年代後半から物価は下落が続き、安倍政権で多少良くなりましたが、インフレ目標2%の達成はついに達成されませんでした。

ラーナーは民間の失業率を抑え込むために財政政策の推進を掲げました。それはケインズ経済学とも通じるものです。

※アバ・ラーナー(1903年-1982年)
ロシア帝国に生まれてイギリスやアメリカ合衆国で活動した経済学者。ケインズ経済学に影響を受け、機能的財政論を提唱した。


機能的財政論の考え方


ラーナーは、経済にマイナスの需給ギャップが生じたときは政府の財政支出がそれを埋め合わせるべきだと考えました。

金融政策も有効であるが、あくまでも主役は財政政策であるという考え方です。

大事なのは、財政政策を行うにあたり、財政収支など気にする必要はないという点です。雇用を保ち、インフレ率を適正に保つことが経済運営の目的であり、財政赤字を減らすことが目的ではないという、MMTの始祖ともいえる理論です。

税金や財政支出は経済を適正に運営するための手段であり、財政収支という帳尻合わせが目的ではありません。

財政赤字が増えようと、高いインフレにならない限り、過剰な支出とはいえないというわけです。

考え方はMMTとほとんど同じ


インフレ率を経済運営の座標とするという点で機能的財政論は現代貨幣理論(MMT)とほぼ同じといってよいと思います。むしろ名前が違うのが不思議なくらいであり、MMTは新機能的財政論ともいえるものです。

しかし、プロレス技のようなMMTなどという3文字が「異端」とか「トンデモ理論」などと言われる一因になっていると思えてなりません。

機能的財政論とMMTで、唯一違うと思うのはMMTがJGP(ジョブ・ギャランティー・プログラム)という就業保証を主張している点です。

JGPは、不況となって失業者が発生した場合に政府が雇用主として、失業者を雇うことを保証するというものです。民間企業からあふれた人員を政府が救い上げ、最低限の生活を保証する雇用を生み出すというのです。

機能的財政論の方が現実的


現実的に考えて、JGPが実現するとは思えない。失業者をすべて雇ったとしても、JGPの給料で生活がずっと成り立つわけがありません。逆にもし生活が成り立つほどの高給をもらえるならばあえて失業し、JGPを利用したいという人があふれ出てくるはずです。

また、どんな仕事をするのか?という疑問も湧きます。人によって与えられる仕事はバラバラであろうし、そうであれば当然不公平が生じます。不平不満が出てくることは容易に想像できます。

JGPはアイデアとしては面白いかもしれませんが、お花畑的発想であり、実現は困難だろうと思います。

とりわけ日本は雇用を守るという意識がまだまだ強く、ドライな契約関係であっさり首切りをするアメリカなどとは全く環境が違います。

もちろん日本のシステムのほうがより人間的だと思います。しかし、デフレ以降に広がった非正規派遣労働などは、日本型の雇用慣習を打ち破った最悪の雇用形態というのが個人的見解です。

最後に


歴史は繰り返される。経済論も例外ではないと再認識させられます。

機能的財政論が展開されたのは世界大恐慌の後でした。恐慌のあとには積極財政論が出てくるのであろうし、それはまた正しいに違いありません。

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