中小証券会社の一部が独自のビジネスモデルで突破口を見出す

かつて日本橋兜町には中小証券が立ち並び、言葉は悪いですが「株屋」が軒を連ねていたのであります。
しかし今は昔、バブル崩壊による株価低迷に手数料自由化の波が押し寄せ、さらにネット証券の台頭という追い討ちで兜町はすっかりその様相を変えてしまいました。
中小証券の実状
中小証券は、株式売買委託手数料の減少、加えて自己売買部門もAIによるアルゴリズム取引に駆逐されて縮小均衡と、まさに袋小路に迷い込んでしまいました。
2019年度、中小証券会社の約半分は赤字となっています。大手証券も苦しいとはいえ、収益源が多様化している点で中小証券とは状況は大きく異なっています。
中小証券の顧客は高齢化し、残っている顧客はインターネットを使いこなせない人か、よほど営業マンを信頼している人のどちらかでしょう。
しかし、高齢の顧客はいずれ株式投資からリタイアします。引き継がれた資産はそのまま中小証券に残ることなく、ネット証券に移るか、売却されるかの2択となることが多いのが実態でしょう。
減少する顧客を新規顧客獲得でカバーするのは極めて困難といわざるを得ません。
突破口を見出す会社も現れた
そんな苦境にあえぐ中小証券ですが、アイデアを絞った独自路線で突破口を見出す会社も出てきました。
金融証券仲介業者と契約して、商品を卸し、利益を上げているのは老舗のあかつき証券です。あかつき証券は2014年に金融証券仲介業者との協業をスタートさせています。
金融商品仲介業がIFAなどという横文字で認知度を高めたことにともない、2018年頃から徐々に成果を上げており、この1年でその収益は前年に比べて2倍超。いよいよ花が開いてきたといえそうです。
あかつき証券は多くの証券会社が苦しんだ2019年度決算でも前年同期比を大きく上回る営業黒字を計上しています。2020年度もさらに業績は上向くと推測します。
大手証券の間隙を縫う会社も
旧来の中小証券のビジネスモデルから踏み出して、M&Aの代理業務や助言業務、富裕層向けに小口のヘッジ・ファンドなどを販売するなど、斬新な取り組みをしているのが、三田証券です。
大手証券が扱わない中小企業向けのサービスを提供することで、差別化を図っています。三田証券も2019年度、黒字を確保しています。
最後に
2020年度はコロナ騒動にもかかわらず株価は堅調に推移しています。干上がりつつあった中小証券にも救いの手が差し伸べられたかのようです。
しかし、書き入れ時とばかりに赤字を取り戻すべく、旧来のビジネスモデルで収益を稼いでも、いずれまた閑散相場に戻るときがくると思われます。
今のうちに新たなビジネスモデルを模索しなければ、ひたすら縮小均衡の右肩下がりとなることは必至だと思います。
今まさに知恵比べの時期に差しかかっているといえるでしょう。
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