構成員契約規制(生保業界の岩盤規制)

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生命保険業界には合理的に考えて、わけのわからない規制があります。その一つが構成員契約規制といわれているものです。

いったいどんな規制で何を目的としているのでしょうか?



構成員契約規制とは


生命保険を取り扱っている法人の代理店の役職員やその法人と資本的あるいは人的に密接な関係にある法人(特定関係法人といいます。)の役職員に生保を販売してはならないという規制です。

規制の対象は契約者のみとなりますが、規制を逃れる目的で、契約者と被保険者を別人にするなどの潜脱行為は規制の対象になると考えられます。そのため、生命保険の申込書の被保険者欄にも職業(勤務先)の記入欄があるはずです。

規制の存在理由


なぜこんな規制があるのでしょうか。

表向きの理由としては、職務上の圧力によって、法人代理店の役職員や特定関係法人の役職員に不当に契約を迫ることを防ぐためとされています。

例えていうならスーパーマーケットの従業員は自分の勤めているスーパーで買い物をしてはならない、なぜなら店長に言われてしぶしぶ買うハメに陥ることになるから、というような規制です。

私の知る限りそんな規制は他の業界で聞いたことがありません。

しかも構成員契約規制の該当となる保険商品はいわゆる第一分野と呼ばれ、生命保険会社のみが取り扱える生命保険分野に限定されており、損害保険会社のみが取り扱える第二分野である損害保険には適用されません。

生命保険と損害保険の要素が混在する第三分野と呼ばれる医療保険、がん保険にも適用されません(一部例外あり)。

保険分野ごとの整理


生命保険(第一分野):生命保険会社のみが取り扱える
(例)定期保険、終身保険、個人年金保険、学資保険など
⇒ 規制あり

損害保険(第二分野):損害保険会社のみが取り扱える
(例)自動車保険、火災保険、ペット保険など
⇒ 規制なし

第三分野:生保会社、損保会社双方が取り扱える
(例)医療保険、がん保険、傷害保険など
⇒ 規制なし (一部例外あり)


この図式を見れば、構成員契約規制は生命保険会社の意向に基づく規制であることは容易に想像がつきます。

金融ビッグバンによって、保険分野への外資参入が認められた際、まずは参入は第三分野に限られました。がん保険で有名な某社などが典型です。

とにかく生命保険会社は第一分野を自分たちの聖域と考えている節があります。

これは邪推ですが、金融当局は外資系保険会社には構成員契約規制などという理解しがたい規制は受け入れられないと考えたのでしょう。

だからこそ、生命保険会社が扱っているにもかかわらず、第三分野の保険には構成員契約規制が適用されないと考えられるのです。外圧に忖度したのだと考えられるのです。

規制の目的


規制の真の目的は、生保会社の販売員を守るためにあります。もっと具体的にいえばいわゆる生保レディです。

法人代理店・特定関係法人の役職員がその法人代理店で生保の契約をしてしまうと生保会社の直販の販売員にとっては勧誘できる大事なお客が減ってしまうので、稼ぎ口が少なくなってしまうというわけです。

歴史的経緯をいえば、太平洋戦争で夫を亡くした多くの未亡人が生保の販売員になったため、彼女らを守る必要があったのです。その名残がいまも脈々と続いているというわけです。時代はすっかり変わってしまったというのにです。

構成員契約規制。完全に時代遅れかつ不条理にもかかわらず、脈々と続く生保業界の闇なのです。侵すことのできない聖域とでもいったらいいでしょうか。

根拠法令


・保険業法第300条第1項第9号
・保険業法施行規則第234条第1項第2号
・保険会社向けの総合的な監督指針Ⅱ-4-2-2(11)

規制見直しの動き


過去には規制を見直そうという動きもあったようです。

(1997年12月)
行政改革委員会の最終意見:今後、保険業法等において、消費者の意見を踏まえつつ、「圧力募集」に対処する他の実効性のある透明なルールを検討するとともに、構成員契約規制の撤廃の可否も含めた検討を行っていくべきである。

(2009年3月)
政府の規制改革推進のための3か年計画(再改定):行政改革委員会の意見を最大限尊重し、金融審議会において構成員契約規制の在り方について、結論を得るべく、引き続き検討を進める。


まとめ


生命保険会社は資本力もあることから、多額の政治献金を行っており、政治を動かす力も大きいことから規制緩和を阻止しているのではないかと勘ぐりたくなります。

もちろん、世の中の秩序を守るために必要な規制まで撤廃してはなりませんが、この構成員契約規制は合理性が乏しく、既得権益を守るためだけに存在しているものと考えます。

もし、構成員契約規制に正当な理由があるとしたら、第一分野のみならず、第二分野や第三分野にも適用されるのが筋というものでしょう。

これこそまさに既得権益を守るだけに存在する不合理な岩盤規制といえるのではないでしょうか。

また、銀行等金融機関が保険を販売するにあたっては、弊害防止措置なる名目で嫌がらせともとれる複雑怪奇で理解不能な規制が幅を利かせています。

こちらの弊害防止措置についてもいつか取り上げてみたいと思います。

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