総合証券ゆえか、焦りなのか、野村証券内部の利益相反

ソフトバンクグループ(9984)は孫正義社長がその類まれなる才能と努力により、創業者一代で巨大なコングロマリットになりました。子会社の数はなんと1,475社、関連会社は455社となっています(2020年3月末)。
そして、無謀とも思えるような資金調達こそがその成長の源泉であったと考えるのは私だけではないでしょう。また、その資金調達を支える担い手の一つが証券会社であることはいうまでもありません。
ソフトバンクグループの親子上場
ソフトバンクグループは持株会社であり、ソフトバンクはグループ売上の過半を占める巨大な子会社です。
もともとソフトバンクグループは上場していましたが、ソフトバンクも今から2年前の2018年12月に上場しました。いわゆる親子上場です。
なぜソフトバンクを上場させたか?と問われれば、資金調達のためだったの一言に尽きると思います。
ソフトバンググループはこれまでも莫大な評価益を抱えた持株を売却して、資金化してきたことはご存じのとおりです。ヤフーやらアリババやら・・・。
しかし、親子上場には問題点が多いと指摘されています。
具体的には、親会社がグループの利益を優先し、子会社に不利益をもたらす可能性があること、いわゆる利益相反の問題が主たるものです。
ソフトバンク上場を野村証券がバックアップ
このような批判を受けつつも、ソフトバンクグループは子会社のソフトバンクの上場を目指しました。主幹事証券を務めたのは野村証券。
公募価格は1,500円で約2兆円の資金調達に成功しました。しかし、問題は株価です。
上場前に通信障害を起こしたり、ファーウェイ製の製品を使用していたことで、アメリカのファーウェイ制裁の影響をもろに受けたりして、公募価格の妥当性に疑問符がついていました。
しかし、1,500円の公募価格は修正されることなく上場決行。見事に不安は的中し、上場日終値は公募価格を大きく割り込む1,282円となってしまいました。
初値が1,463円ですので、そこから失望売りが加速したと考えられます。そして今だ、その低迷から抜け出していないのです。
●ソフトバンク(9434)

ソフトバンク上場失敗は想定の範囲内?
幹事証券会社の一部では、無理に投資家に販売して迷惑をかけることを恐れ、自社でそのまま保有したというから驚きです。そんなこと普通ありえません。
そして、主幹事証券である野村証券内部でも意見は分かれていたといいます。
上場延期を求める声もあったようですが、ソフトバンクを担当していた法人部門の声が勝り、予定どおりの上場となり、結局は失敗しました。野村証券内にも利益相反の問題が発生していたのです。
投資家に割高な価格で買ってもらいたいソフトバンク寄りの立場と、なるべく安く株を買いたい投資家の間で利害が相反する状態となっていました。
最後に
このような問題は野村証券のみならず、どこの証券会社でも起こることです。しかし、投資家サイドに立てなかった野村証券の罪は軽くはないはず。
ソフトバンクの株はその後も1,500円を超えたかと思えば、待ち構えていたかのようにすぐに売られ、今なお公募価格を下回り低迷しているのですから・・・。
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