ROE8%でなぜか変わる株価水準。市場の歪み

2020年11月10日、アメリカの世界的製薬会社、ファイザーが開発中の新型コロナウイルスワクチンの臨床試験の結果を公表しました。
それはワクチンは90%を超える予防効果があるというものです。その発表を受け、世界の株式市場は大きく様相が変わったのですが・・・。
ワクチンへの期待から市場が一変
ワクチンによるコロナ騒動終結への期待が世界的に高まりました。それは世界経済がコロナ前に戻っていくことを意味します。
コロナ騒動は社会のIT化を加速することから、それまではIT関係の新興市場が活況を呈していましたが、一気に旧来型産業の株が買い戻されました。
ところがどっこい日本だけだけはどうも様相が異なるようです。
買われない日本の割安株
欧米では割安に放置されていた株が急激に買われたにもかかわらず、日本の割安株は買われることなく放置されました。
その原因として語られているのが、日本の割安株のROE水準の低さです。
アメリカ株のROEは16%、欧州は11%程度なのに対し、東証一部の平均は7%程度と資本効率が低く、そもそも投資の対象から外れており、世界経済の流れなど関係なく無視されたという結果です。
伊藤レポートとROE
2014年8月に公表された経済産業省の「持続的成長への競争力とインセンティブ」(通称:伊藤レポート)では、日本企業にROEを8%の水準まで高めるよう提言がなされました。
同レポートが出る前にもROE8%という数字はなんとなく投資の世界では常識のように認識されており、それがレポートとして具体的に示されただけだと思います。
要するに世界水準は最低8%であるということです。
ROEから見る歪な株式市場
ROE8%。この数値を境に株式市場における企業の株価は大きく変化しています。
8%を下回っていると企業の解散価値程度にまでしか株価は上がらず、8%を上回ると途端にそれ以上に株が買われるという構図となっています。
株価を上げたいと考える企業経営者にできることは3つしかありません。利益を増大させるか、自己資本を減らすか、あるいはその両方です。自社株買いはその典型といえるでしょう。
市場の歪みを利用する
ROE8%という分水嶺。これは市場の歪みともいえるものです。8%以上でなければ株にあらずといったところであり、8%未満の株の中に宝が埋もれているともいえます。
なぜなら、今後8%以上に上昇すれば急に株が買われる可能性があるからです。
試しに、ROEが7%以上8%以下、経常利益前期比予想10%以上、PER20倍以下、配当利回り3%以上の条件を満たす銘柄を探してみました。
以下はその結果です。
・セントケアHD(2374)東1 サービス業
・ハニーズHLD(2792) 東1 小売業
・M−トラストHD(3286) 東マザ 不動産業
・イマジニア(4644)東JQS 情報・通信業
・綜研化学(4972) 東JQS 化学
・日宣(6543) 東JQS サービス業
・日新電(6641) 東1 電気機器
・SOMPOHD8630 東1 保険業
・ハニーズHLD(2792) 東1 小売業
・M−トラストHD(3286) 東マザ 不動産業
・イマジニア(4644)東JQS 情報・通信業
・綜研化学(4972) 東JQS 化学
・日宣(6543) 東JQS サービス業
・日新電(6641) 東1 電気機器
・SOMPOHD8630 東1 保険業
チャート的に割安に放置されているように思えるのが、ハニーズHLD(2792)。
ショッピングセンターを軸に低価格の婦人カジュアルを展開している会社です。中国から完全に撤退しているようで、今後の米中冷戦の影響を受けることも少なそうです。

今後の成長期待も兼ねるとしたら、イマジニア(4644)でしょうか。ゲーム関連ですが、ゲームをしない私には判断しかねます・・・。
自己資本と失業率
日本の会社はROEが低いと批判されます。
しかし、デフレが長期間続いている中で企業経営者が守りに入るのはある種当然です。新規の投資先は少ないし、経営が悪化したときのために自己資本を厚くしておくのは会社を守り、従業員を守るためには悪いことばかりではありません。
現にコロナ騒動下でも日本の失業率は世界各国に比べてマシな水準です。

(出所:労働政策研究・研修機構「新型コロナが雇用・就業・失業に与える影響」)
政府にはデフレ脱却を早く進めてもらいたい。さもなくば日本人は働いても働いてもますます貧しくなっていくだけです。
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