顧客保護を抽象論でなく具体的に示す稀有な証券会社

株価ボード



顧客保護とか顧客本位とかもっともらしい美辞麗句を並べ立て、いかにも素晴らしい理念に則った営業活動を行っているかと思えば実態はまったくかけ離れていて、自分本位、会社本位の運営がなされているというのがだいたいの証券会社の姿ではないでしょうか。

しかし、そんな抽象論ではなく、具体的な行動として顧客保護を大胆に示している証券会社があります。そこには不退転の覚悟が見え、嘘偽りを感じさせません。



その証券会社は「いちよし証券」


それは中堅証券の一角を占める、いちよし証券(8624)です。

いちよし証券は1950年に創立された老舗証券会社であり、従業員数は約千人(2020年9月末)。営業拠点は49か店(2020年12月1日現在)となっています。

いちよし証券のホームページには「お客様本位の業務運営をより一層推進するための方針」の中に具体的な同社の禁止行為ともいえる「いちよし基準」が公表されています。

過去の経験をもとに複雑で顧客が理解できないような商品や中長期の資産形成にはそぐわないような商品はどんな売れ筋商品であっても販売・推奨しないという方針です。

放っておけば人は易きに流れる。手数料(ノルマ)稼ぎのために、特定の顧客に依存して回転売買をさせる手法に流されないようにしているものと考えられます。

7つの基準


「いちよし基準」では以下の7つの基準が示されています。

1.公募仕組債は取り扱いません。
2.債券は高格付けのみとし、不適格債は取り扱いません。
3.私募ファンドを取り扱いません。
4.個別外国株は、勧誘しません。外国株は投信での保有をお勧めします。
5.投信運用会社は、信頼性と継続性で選びます。
6.先物・オプションは勧誘しません。
7.FX(外為証拠金取引)は取り扱いません。

ここまで自分の手を縛るのも珍しい。

収益のために顧客を犠牲にしないという固い決意が見て取れます。

業績は大丈夫なのか?


どんなに高い理念を掲げても、会社が継続しなければ顧客に良質なサービスを提供し続けることはできません。

その意味で、会社が黒字を出すことは非常に重要なことです。いちよし証券がいちよし基準を宣言したのは2009年。既に10年以上経過しています。

さて、いちよし証券の業績はどうでしょうか?

直近、2020年3月期は営業収益188億円で、純損失7億円と厳しい決算となっています。その前は16億円の黒字、さらにその前は49億円の黒字でしたので、年々厳しくなっている感は否めません。

2021年3月期も半期過ぎて、営業収益が87億円で3億円の純損失となっており、厳しい状況が続いています。

とはいえ、ここ2年はどこの証券会社も概ね厳しい決算であり、いちよし証券だけのことではありません。

最後に


足元の業績は厳しいとはいえ、安易な道に戻らないことを祈るばかりです。

まさに、いちよし証券が自ら語っているように過去の経験則からいちよし基準が策定されたのであれば少々業績が厳しいからといって変更してしまっては何の意味もありません。

自分がお客になるなら、こんな証券会社を選びたいし、今後ともぜひ頑張ってもらいたいと願うのであります。

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