急激な為替変動は国を弱体化させる。政府、日銀の責任は重大

急激な為替変動は物価に大きな影響を与えるとともに、輸出企業にとっては円ベースの売上の変動をきたすため、非常に神経質な問題です。
とりわけ急激な円高は日本の輸出主導型の製造業にとって円ベースの売上が急減するため、収益が悪化し死活問題となります。
プラザ合意以降の円高
1985年以降のプラザ合意以降、アメリカはドル安政策により輸出競争力を取り戻そうとしました。
その頃の目の敵はもっぱら日本。今の中国みたいなものです。しかし、中国と違って軍事的な野望を目指したり、他民族を武力で抑圧するような非人道的行為を行っていたわけではありません。ただ単に、無邪気な経済発展を続けていただけです。
日本の経済は好調で、アメリカにとっては目の上のたんこぶであり、日本をなんとか弱体化させることに必死でした。
経済も株も絶好調だったのですから、目を付けられるのは当然。そして、見事にアメリカの作戦は成功し、日本はその後、バブル崩壊へと至るのであります。
歴代の日銀総裁と政権と為替レート
以下は1985年以降の歴代の日銀総裁と首相、そして円ドルの為替レートの関係を示したものです。

1980年代後半の円高はある種しかたがない。日本は当時、飛ぶ鳥を落とす勢いだったのですから。今の若い人には想像もつかないでしょう。
日本経済は世界一などといった論調がまかり通っていたのです。そしてそれは、アメリカの癇にさわりました。
日本の輸出競争力を何とか下げようと、ドル安誘導したのです。日本は勝ちすぎていましたから、多少の火の粉をかぶることは仕方がなかったといえるでしょう。
にしても、三重野総裁時代の無策ぶりもひどい。1995年には一時80円を超える円高となりました。ここまで短期に円高が進むと、対処のしようがありません。
その後、松下総裁時代に一気に円安へと反転することとなります。
2000年以降の動き
2000年に入ってからの動きで目立つのは白川総裁時代です。再び、80円を切るまでに円高が進展しました。
リーマンショックの後、世界各国が大規模な金融緩和をしたのに対し、日本は相対的に小規模な金融緩和にとどまったため、相対的に金利が高くなり、一気に円高が進むという無能ぶりをいかんなく発揮しました。
悪夢の民主党政権であったこともそれに拍車をかけたものと考えられます。
以下は日本の海外直接投資の推移を示しています。

(出所:社会実情データ図録)
1985年以降の急激な円高のときと同様に、リーマンショック以降に海外直接投資が急増していったさまが見て取れます。
企業が海外へ逃げ、国内の成長が弱まる
日本から国際競争力のある第二次産業がどんどん海外への移転していきました。
そして、相対的に増加するのはサービス業などの第三次産業です。以下は産業別の就業者数とその比率です。

(出所:社会実情データ図録)
サービス業は製造業に比べて労働生産性が低い。そのため、人手不足だが賃金が低いという状況が常態化しています。
また、これに加えて外国人労働者の流入が賃金の下落競争に拍車をかけました。
以下は日本の実質賃金の推移を示しています。

(出所:新世紀のビッグブラザーへ(三橋貴明氏ブログ))
一貫して右肩下がりとなっているのがよくわかります。
急激な為替変動が海外への投資に向かい、外国で雇用を生む代わりに日本人はひたすら貧乏になっています。
最後に
日本経済弱体化の要因は数々ありますが、急激な為替変動になんら手を打たず放置した政府および日銀の罪は重いと言わざるを得ません。
企業は生き延びるために、海外に出る。それは生物が食物を求めてさまようのと同じであり、なんら責められることではありません。
それにしても黒田日銀総裁は頑張ってくれていると思います。
任期はあと2年ほど。黒田日銀総裁の後任が誰になるかによって、日本経済の浮沈が大きく左右されることは間違いありません。
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