市場競争の激化はむしろイノベーションの衰退をもたらす

規制は緩和し、自由競争を加速させれば企業間の競争により、イノベーションが生まれやすくなる、などと言われれば「なるほど」とほとんどの人は納得してしまうのではないでしょうか。
しかし、ことはそう単純ではありません。市場での激しい自由競争はむしろイノベーションの阻害要因となるというのが実際のところなのです。
MBAはイノベーションの邪魔をする
海外に留学し、MBAを取得して日本に帰ってきた期待のエリートが会社に帰ってきても、ほとんど役に立たないのが大方のところです。
企業の長期的成長という意味ではむしろ害悪といってよいでしょう。MBAなど取らないほうがマシだということです。
ビジネススクールでは企業を徹底的に数値化し、定量化します。ROEやらIRRやら・・・。
これらの数値は企業の研究開発力や人材力といったものを一切考慮に入れていません。短期的に利益を上げるのであれば、研究開発費は削り、人員はカットするのが手っ取り早いやり方です。しかしそんなやり方が正しい訳がありません。
こんなことをやっていたら長期的な競争力は下がるばかり。あまりに経営が刹那的になってしまうのです。
アメリカ産業の変化
アメリカの経済は1970年代まで、必ずしも株主原理主義、市場原理主義(新自由主義)ではありませんでした。
しかし、1980年代以降、ビジネススクール出身者の社長が多くなるに従い、そろばんはじくだけの経営になってしまった。
目先の利益を追い求め、長い目で企業あるいは製品を育てるといった視点が少なくなったため、長期的には競争力を無くし、日本企業に追いまくられる羽目になったのです。
日本はアメリカの後追いをする愚
日本はアメリカの失敗を目の当たりにしながら、それに学ぶことはありませんでした。むしろアメリカ追随の経営にまい進することになってしまったのは大いなる皮肉です。
バブル崩壊がそれに拍車をかけたことは言うまでもない。
画期的なイノベーションを起こすには、長期雇用が欠かせないところ、日本企業はその余力を削がれていくことになります。
家族的で長期的な人間関係が深いコミュニケーションを可能とし、それが源泉となって面白い製品が生み出されてきたわけですが、人間関係は希薄となり、コミュニケーションは殺伐としたものとなりました。
そこからは画期的アイデアや商品が生み出されるはずもなく、1990年代以降、日本の産業には画期的なイノベーションが起こらなくなってしまいました。それは今日まで続いています。
最後に
日本が復活するには、日本の長所を伸ばすしかない。アメリカの猿真似をしても本家にかなうわけがありません。
市場原理主義、株主至上主義(新自由主義)からは一歩距離を置き、長期雇用と家族的経営による濃密かつ人間的なコミュニケーションの復活が必要です。そうすれば再び日本から画期的な商品が生み出されていくだろうと確信するのであります。
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