どうもお花畑的なMMTのJGP(就業保証プログラム)

一昨年(2019年)、にわかに脚光を浴びた現代貨幣理論(MMT)。経済運営の視点をインフレ率のコントロールに置き、財政赤字や財政均衡などといったものは憂慮しないという考え方は目からウロコが落ちるものでした。
しかし一方で、いささか現実味を欠くというか、社会主義的発想というか、とても実現するとは思えないようなお花畑的発想があるようにも思えるのです。
MMTが掲げる就業保証
MMTは失業を忌み嫌います。それ自体は素晴らしい。誰しも失業したくないと思いますし、生活の安定を望む人がほとんどでしょう。
現代社会においては、失業者の救済は失業保険という金銭の形で行われるのが一般的です。
しかし、MMTにおいては政府が失業者に仕事を与えることを保証するという考え方です。公的サービスに従事してもらい、給与を払う。もちろん、制度を使うかどうかは任意です。
この就業保証は一時的な制度ではなく、恒久的制度だといいます。景気が悪化したときに人数制限なく、政府が雇用を保証するというのです。
JGPの目的
この制度をMMTではJGP(ジョブ・ギャランティー・プログラム)などと呼んでいます。
JGPの目的はもちろん失業者の救済。そして、安定的に給与が支払われることで、消費の落ち込みを防止するという景気回復のための機能でもあります。
そして、景気が好転したときには人手不足が発生することで、人件費が高騰し、JGPを利用していた人々はより高い給与を支払う民間企業へ人が移っていくと想定されています。
いわば景気の循環による失業者の発生の調整弁となるというわけです。
具体的な仕事の中身
ではいったいどのような仕事が想定されているのか?
JGPでは地域密着型の公共サービスを考えています。時給は15ドル程度を推奨しているとのことですから、物価水準から考えて、日本なら時給1200~1300円程度となると推測します。
そう考えると決して安い賃金だとはいえません。そのへんでバイトするよりも高い賃金だと思います。
しかし、一家の大黒柱としては少なすぎる。とても家族を養ってはいけないでしょう。
疑問がいくつも湧き上がる
アメリカと日本では、雇用の流動性や考え方など様々な相違点はあるのでしょう。
しかし、失業者を救済するにしても、一家の大黒柱はとても救済できないのは明らか。
かといって、大黒柱を側面支援するパートタイマーであれば十分すぎるほどの金額です。景気が良くなったからといっても、居心地が良ければずっとJGPを利用し続けるのではないでしょうか。
一般論でいって、公的サービスよりも民間企業のほうが仕事がハードとなるのは容易に想像できます。
景気が良くなっても居座り続ける人が出てきて、人手不足が解消されず行き過ぎたインフレ懸念が出てきた場合、いったいどうするのかよくわかりません。
また、少々時給が高いからといって、せっかく慣れた仕事を放り出して、ひょいとすぐに転職するものなのでしょうか。アメリカ人は金にシビアだから割り切れるのかもしれませんが、日本人的感覚からは理解しかねる部分です。
最後に
JGPに疑問を感じるからといって、MMT全体を否定するものではありません。むしろ肯定しています。
しかし、JGPに限ってみれば、いささか考え方が社会主義的といわざるを得ないというのが個人的な印象です。
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