一転、罪状認めるPPIH前社長。かなり悪質な取引勧奨

電話



PPIH(旧ドン・キホーテHD)の前社長が取引勧奨行為という金融商品取引法違反を行ったという疑惑で逮捕されたのは2020年12月。

これまでの報道では前社長は一貫して疑惑を否定していたのですが・・・。



初公判で罪状を認める


2021年3月9日に初公判が行われました。前社長は公判の罪状認否で起訴内容を認めたということです。

そして、その詳細が徐々に明らかとなってきました。

検察側は前社長の行動に関する日付と前社長の言動を具体的に示しており、その内容はかなり悪質といわざるを得ません。

2018年9月初め


前社長は知人の男性と頻繁に電話などで連絡をとっていたことが明らかになっています。

「ドン・キホーテの株、買っておいた方がいいぞ。俺だったら絶対買うなあ」などという会話がなされたといいます。

2018年9月4日


「仕込みは終わったん?」「もうそろそろ、買い始めたほうがいいぞ」などという発言が確認されています。

もうそろそろ、というのはまずい。なにしろ、10月11日にユニー・ファミマがドン・キホーテHDにTOBを実施する旨の公表がなされたのです。

この日を意識して、「そろそろ」という発言が出たと考えるのが普通でしょう。

2018年9月26日


「ありったけ行っても大丈夫だから。ドン・キホーテの社長の俺が言ってんだから、俺を信じろよ」「10月10日ごろまでに買っておけばいいよ」などの発言が確認されています。

”10月10月ごろまでに”は完全にアウトでしょう。100%何かを示唆しているとしか思えません。

そしてその翌日にはTOBの実施が公表されたのです。因果関係が無いはずがありません。

知人男性の取引


前社長の取引勧奨により、知人男性はTOB公表前に計4億3千万円でドン・キホーテHDの株を購入、TOB公表後に売却して、約6,900万円の利益を得たといいます。

市場の公平性に欠ける行為といわざるを得ない。

真面目な投資家は馬鹿をみるような株式市場では市場参加者がそっぽを向くことになってしまいます。

取引勧奨行為は認知度が低いというが・・・


取引勧奨行為が金融商品取引法で明確に禁止されたのは2014年。今だ周知度が低いという指摘もあります。

しかしながら、今回の前社長の行為は常識的に考えて、自分が何か悪いことをやっていることは知っていたはずです。

だからこそ、示唆にとどまっていると考えられます。本当に悪気がないのであればなにもかもぶちまけて話してしまうところでしょう。

もっともそんな無知識な人が上場企業の社長になれるはずもありません。

インサイダー取引と取引勧奨との違い


インサイダー取引は広く知られた違法行為です。今回の事例にあてはめれば、TOBが実施されるという重要事実を知人に伝えて、知人が株式取引を行うようなケースです。

インサイダー取引では情報伝達者も株式取引を行った者も規制の対象となります。

一方、取引勧奨の場合は重要事実は伝えず、取引を勧める行為です。なんらかの示唆でもって取引した方が良いであろうことをほのめかすのです。

この場合、取引を勧めた者が規制対象となり、株式取引をした者は規制の対象にはなりません。

最後に


それにしても上場企業の社長とは思えぬ軽率かつ悪質な行動には驚かされます。状況証拠からほとんど容疑は固まっており、公判で戦っても心証が悪くなることから情状酌量を期待して罪を認めたのではないかと考えられます。

ホルダーとしては、今回の事件があくまで個人の問題であり、PPIHの企業風土ではないことを祈るばかりです。

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