教育格差こそが格差社会容認の原動力

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フランスの世界的に著名な人類学者かつ歴史学者、エマニュエル・トッド氏の現代社会に対する洞察は斬新かつ鋭い。

そして、なぜ今、世界で格差社会が生まれているかを見事に指摘しているのであります。氏の指摘を咀嚼し、現代社会でなぜ格差が拡大しているのか考えてみると、そこには非情かつ冷酷な教育による格差の容認があったのです。



自由貿易は格差を広げる


真に自由な貿易などありえないという突っ込みはなしとして、世界の貿易の自由度が増せば増すほど格差社会が進展するのは世界の現状をみればわかることでしょう。

グローバリズムが進展し自由貿易が盛んになれば、国家間の格差が縮小する一方、国内の格差は拡大していきます。

今の中国が典型的です。しかも彼らは自らは保護貿易をしながら他国には自由貿易を強制して経済成長し、今や世界2位の大国です。明らかにモラルなきルール違反を犯しています。

中国のGDPは2028年にはアメリカを抜いて世界1位になると予想されており、放っておけば東アジアは完全に中国の支配下に置かれることになるでしょう。

ウイグル人に対する弾圧、虐殺、臓器売買などと同じようなことがやがて日本でも行われる可能性はゼロではありません。

ところで、中国の国内の経済格差は著しい。1億人の民が富裕層になる一方で10億人以上は依然として貧しいままです。

中国ほどではないとはいえ、日本も格差が広がりました。グローバルに事業を展開する大企業などの社員が豊かである一方、国内のサービス業従事者などは低賃金で重労働というのが実態です。

派遣社員などの非正規雇用の割合が増えて賃金はこの20年間下がり続けているというのが日本の悲しく恥ずかしい姿です。

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(出所:新世紀のビッグブラザーへ(三橋貴明氏ブログ))

こんな状態がずっと続いている責任は、デフレにもかかわらず消費増税を繰り返してきた政府(主に財務省)にあることは疑いようがありません。

教育格差が自由貿易を正当化


皮肉なことに高等教育(名門大学へ行ったかどうか)の有無が自由貿易を正当化する鍵となっています。

自由貿易を進めれば格差が拡大することはもはやわかりきっているにもかかわらず、それを是とできるのは、自由貿易を進めるエリートは高等教育を受けており、高等教育を受けた者は勝ち組となって当然だという心理が働くためです。

そこには弱者救済などというヒューマニズムなどありません。

他者からいかに搾取するか、利益を生み続ける仕組みを作るか、だけに興味が注がれているのが実態です。

その典型が株主資本主義でしょう。

教育格差と経済格差


以下は学歴別の年収を年齢別、性別に分けて比べたグラフです。

20210314gakureki.jpg
(出所:厚生労働省)

この傾向は日本だけではなく世界の多くの国に当てはまります。

自由主義はほとんど宗教


完全なる自由貿易はいわば無秩序貿易、ルールなき貿易といえると思いますが実際にはそんなことはありえません。

しかし、グローバリズムを推進することで、多額の利益を得ようとするグローバリストは自由貿易を錦の御旗にします。

もはやそれは新興宗教に近いものです。

自由という言葉の響きに騙されるだけで、実際に行おうとしていることは自らを利するためにルールを有利にして、ハンディキャップをいかに大きくするかを争う醜い戦争です。

保護主義こそが民主主義の原動力


結局のところ、自由貿易は各国国内の格差を拡大させ、社会を分断化させています。

分断化された社会ではまともな民主主義も機能しなくなる。憎しみや怒りが渦巻き、やがてクーデターやテロに発展していきます。

民主主義が機能するには格差はほどほどにして中流層を多くしなければならない。

そのためには行き過ぎた自由貿易から、管理された保護貿易に移行していく必要があると思います。そうしなければ国内の産業がつぶれて衰退していくことになります。

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