またもやネット証券の安全性に疑念。松井証券不祥事

鍵



正確には松井証券(8628)が不祥事を起こしたのではありません。

松井証券からシステム運用を任されていたSCSKの社員(既に解雇済)が松井証券の顧客口座に勝手にログインし、無断で株を売っ払うなどしたお金を、不正に開設した銀行口座へ出金して引き出していたというのです。

それにしてもこの事件。前社長の退任劇と時期が前後し、どうにも後味悪く感じるのです。



事件の概要


松井証券のシステム管理を請け負っていたSCSKのシステムエンジニアが、松井証券の顧客210人分のログインIDやパスワードを不正取得し、そのID、パスワードを使用して15人の口座にログインし、株式を無断で売却するなどし、顧客口座から不正に出金していたというのです(約2億円)。

容疑者は業務を装い、松井証券のデータセンターから顧客IDなどのデータを自分の端末に転送していたようです。

狙われた口座は比較的ログインが少なく、取引が少ない口座だったようで、容疑者は発覚しにくい口座を狙い撃ちしたものと推測できます。

不正に出金され、出金先口座となった銀行口座は当然顧客名義と同名義です。

容疑者のパソコンからは偽造された健康保険証の画像データが保存されていた模様であり、偽造した本人確認書類で顧客名義の銀行口座を本人の知らぬ間に作ったものと思われます。

そして、不正入手したID、パスワードを利用し勝手に出金先口座を変更していたのでしょう。

素朴な疑問


それにしても不思議なのは、2020年の夏頃にSBI証券でも似たような事件が発覚し、ネット上で出金先口座を変更できるのは危険だということで、ネット証券各社は、出金先口座の変更には変更用紙の提出を求めるようになったことです。

書類での変更が必要になったことから、ID、パスワードが盗まれたとしても、不正に出金される可能性は低くなったはず。

ところが今回の報道では出金までされているのです。

いったいどういうことなのか?事件が起こったのはいったいいつだったのかが気になります。

松井証券のプレスリリース


松井証券が2021年3月24日付で発表したプレスリリースによれば、事件が起こった時期は2017年6月29日から2019年11月12日にかけてです。

実に2年以上にわたり、犯行が繰り返されていたことになります。

それではいったい事件が発覚したのはどういった経緯だったのかが気になるところです。

SCSKのニュースリリース


SCSKが2021年3月24日付で出しているニュースリリースに、事件の発覚経緯が書かれていました。

それによれば、2020年1月に、身に覚えがない取引があったという顧客の通報を受けて松井証券が調査を開始したとあります。

SCSKは松井証券からの照会に対し、ただちに調査を開始したといいます。システム会社のことですから、事件の概要をつかむまでにそれほどの時間は要しないと思われます。

あとは証拠固めをどうするかという問題です。

2020年9月にSCSKは今回の不正に関し、警察へ告発したと記されています。

不思議な前社長の退任


ところで、不思議なのは松井証券の第二の創業者ともいえるカリスマ社長であった松井道夫氏が突如として退任を発表したのは2020年3月下旬のことでした。

それはあまりに唐突だったのです。

なにしろ、2020年1月元旦に出された年頭の挨拶では、社長を今後も続ける意欲を示していたからです。

以下はその一節です。

”人生100年時代と言われる中、私などはまだ人生の三分の二に到達したにすぎず、「もうはまだなり」で経営者を続けていくのが定めだと思っている。”

この挨拶の3か月後に急遽退任が発表されたのです。

奇異に思わないのがおかしいといったところでしょう。

最後に


勝手な憶測であり、下衆の勘ぐりともいえますが、松井前社長がこの事件について、社長時代に知っていたことはまず間違いないと思います。知らなければむしろ大問題というものです。

いずれ世間に明るみになるのはわかり切ったことなのですから、このやっかいな問題から逃げるために退任したという印象をもたれても仕方がない。

常識的に考えて、退任を考えていたとしても、こんな問題が浮上すれば問題を片付けてから退任すべきでしょう。

報道では現社長が深々と頭を下げた写真が載っていますが、責任はむしろ前社長にあると考えられます。前社長の退任劇は晩節を汚したといわざるを得ません。

それにしてもネットでの取引は証券取引に限らず、セキュリティへの配慮が欠かせないと再認識させる事件なのです。

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