アメリカの富裕層へのキャピタルゲイン課税引上げという冷や水

アメリカや日本、イギリスなど自国通貨を持つ主権通貨国にとって、国の財源として税金を取る必要がないことは、欧米そして日本の一部賢者にとって常識となりつつあります。
税金が不要というわけではありません。税金はそれを通じて国家の政策目標を達成させるという目的があります。
例えば、電気自動車を普及させたければ電気自動車の購入にかかる税負担を減らし、内燃燃料で走るクルマの税負担を上げるなどして政策実現を図っていくというわけです。
日本はデフレギャップの下で増税するという愚行
日本はバブル崩壊後、一貫してデフレ状態にあり供給が需要を上回るというデフレギャップの状態にあります。
モノが余って売れず、所得が伸びずに苦しんでいるのですから、モノが売れるようにする政策を取る必要があります。
例えば消費税減税です。消費税はいわば消費に対する罰金といえるわけですから購買意欲を減退させることは間違いない。
景気回復を考えた場合、全く逆効果となるのが消費増税であったわけですが悪夢の民主党政権が先鞭をつけ自民党はそれを実行しました。もはや与党も野党も目くそ鼻くそといえます。
そしてこのコロナ禍でも一向に下げる気配はない。世界の多くの国々が消費税率を下げているのに日本はやらない。政治家は財務官僚の言いなり(犬)となり、もはや存在価値はないに等しい。
政治家が国を動かさなければならないのに、選挙で選ばれてもいない官僚が国を動かしているのですからおかしいとしかいいようがありません。
アメリカのキャピタルゲイン課税増税案
ところで、アメリカの富裕層に対するキャピタルゲイン課税の引き上げ案が話題となっています。
具体的には、所得が100万ドル(約1億800万円)以上の富裕層に対するキャピタルゲイン課税の税率を、現行の2倍となる39.6%に引き上げるという案です。
所得税の最高税率も37%から39.6%に引き上げて格差の是正につなげたい意向です。
【参考】

(出所:財務省)
現状、富裕層でも1年超、株を保有していればキャピタルゲインは20%でしたが、長期保有していても39.6%に増税されるというのが今回の案の肝となっています。
格差是正という政策目的
これはまさに政策目的を持った増税案です。
アメリカでは富裕層への富の一極集中の傾向が強まっており、FRBの統計では2020年の全米の家計資産のうち、上位1%が39兆ドル(約4,300兆円)保有しており、全体の31%を占めています。下位50%の人の資産は2.5兆ドル(約270兆円)と全体のたった2%です。
これをイメージ化すると以下のようになります。

新型コロナウイルスの蔓延により、上位1%の資産はさらに約7兆ドル増えているのに対し、下位50%の資産はほとんど増えておらず、富裕層との経済格差はさらに広がっており社会の不満は高まっています。
そして増税案に関するバイデン政権の政策目的は格差の是正です。
富裕層が株で儲けても税金で多く召し上げることにより、貧困層との格差拡大を抑えようというわけです。
増税への懸念
格差是正という目的自体はすばらしい。しかし、投資家にとって気がかりなのは富裕層の投資意欲の減退です。
儲かっても税金で多く持っていかれるなら投資は控えようというインセンティブが働き、それは結果的に株価の下落要因となります。
現にキャピタルゲイン強化の報道を受け、株価は一時軟調となりました。またキャピタルゲイン課税強化は暗号資産にも及ぶため、ビットコインなども一時値が崩れました。
最後に
この増税案、早ければ2022年にも実現するとのこと。まだアドバルーンを上げているだけかもしれませんが、実現可能性が高まれば2021年中にかなりの売りが出てくるものと予想されます。
増税案は市場に冷や水を浴びせるのが目的であると考えられ、アメリカ当局は実力以上に株価が上昇していくことを望んでいないと見ることができます。
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