日銀もさじ投げ。コロナ被害が少ないのに景気好転が遅れる日本

2021年4月27日に開かれた日本銀行の金融政策決定会合において、日銀は2021年度の物価見通しを引き下げました。
日本よりもはるかにコロナ被害が大きい欧米各国がV字回復を見せる中、日本はまたもや取り残されています。ワクチン接種の遅れといい、コロナ対応の迷走ぶりといい、この国はいったいどうなっているのでしょうか。
新型コロナウイルスの被害比較
以下は新型コロナウイルスの世界各国の被害状況を示しています。最近の被害が大きいほど色が濃くなっています。

(出所:社会実情データ図録)
2021年4月25日現在、アメリカの感染者はなんと3,000万人以上、死亡者数は50万人以上とすごい被害となっています。
かたや日本は感染者が50万人以上であり、アメリカの死亡者数と日本の感染者数はほぼ同程度。死亡者数に至っては50倍以上の開きがあります。
それにしてもアメリカでは国民の10人に1人が感染しているというのですからすごい数字です。
また、それだけの人数を検査できるキャパシティがあったことにも驚かされます。日本は欧米諸国の被害に比べれば概ね数十分の1程度と考えてよく、相対的に見れば被害は極端に少ないといえます。
なぜ被害が少ないかは依然として不明であることが不気味ではありますが、被害が小さいことは事実です。
被害が小さいにもかかわらず政府への不満は高い
被害が小さいのですから政府の対応に満足している人が多いかと思えばそんなことはありません。
以下は2020年8月の各国別のコロナ対応への不満足度を示しています。

(出所:社会実情データ図録)
日本は被害は小さいのに否定的評価では第4位。被害が小さくて済んでいるのは政府の適切な対応によるものだと思っていない人が多いということです。
人口当たりの死亡者数でトップのベルギーよりも否定的評価が多いというのはある種驚きです。
補償なき自粛要請、アベノマスクなどふざけた対応が招いた数字だと考えられます。騒動当初などはお肉券やお魚券などといった対策が検討されたなど今となっては信じがたいお笑い草です。
日銀の2021年度見通し
被害が少ないにもかかわらず日本経済の回復力は鈍い。
2021年1月の金融政策決定会合では2021年度の物価上昇率を0.5%と予想していましたが、今回(4月)の見通しでは0.1%に引き下げました。
消費が依然として弱いということです。
現在の黒田日銀総裁の任期は2023年4月まで。結局のところ2%のインフレターゲットは10年経っても達成されない可能性が高まってきました。
これを黒田総裁の責任にすることはあまりにも酷というもの。日本銀行はやれることはすべてやったといってもよく、問題は日本政府にあります。
金融政策だけに頼って財政政策は縮小し、消費税を増税するという愚行で日銀の金融緩和の効果を完全に打ち消して足を引っ張りました。
この責任は財務省、大手メディア、前安倍政権にあります。
欧米は急速に回復
一方で、コロナ被害が大きいにもかかわらず欧米の景気回復の力は強い。
アメリカの消費者物価指数は2021年3月、前年同月比で2.6%上昇しました。ユーロ圏も1.3%上昇しており、立ち直りの兆しが見えています。
ところが日本は0.2%の下落。被害が少ないのにデフレ状態から脱せません。
この差はどこから生まれるのか?といえば、やはり政府の財政支出の規模の違いによるものです。
欧米は本気の財政出動でデフレギャップを埋めようとしており、その覚悟の違いが数字に出ているだけです。日本はコロナ禍にもかかわらず財務省による緊縮財政という既定路線から路線変更することができません。
また別要因としてワクチン接種の遅れという問題もあります。
以下は2021年5月2日現在の世界各国の人口100人当たりワクチン接種回数です。

(出所:NHK)
日本の少なさは突出しています。発展途上国にも遅れを取っているという信じがたいレベルにとどまっています。
日本政府が日本人はワクチンを受ける必要がないと考えているのならば話は違ってきますが、政府は早めにワクチンを打つことに取り組んでいると宣言していているにもかかわらず、この惨状なのです。

(厚生労働省ホームページより(赤線加筆))
もはや日本は発展途上国以下に転落したと考えて差し支えないでしょう。
最後に
日本の危機管理能力の欠如は目を見張るものがあります(皮肉)。
いったいこの国はどうなってしまったのでしょうか。子どもが少なくなるのもわかります。なにしろ国が衰退して転落しているのですから子どもが不幸になる可能性が高い。
貧しくて結婚できない人が多くて子どもが減ったという見方がある一方、子どもが要らないから結婚する必要もないという人が増えたという考え方もできます。
以下は未婚者が希望する子どもの数の推移です。

(出所:国立社会保障・人口問題研究所)
明らかに年を追うごとに減っていることがわかります。これを反転させるのは並大抵のエネルギーではありません。子どもの養育費、養育負担を相当程度、国が負担しなければ日本の少子化はますます加速していくはずです。
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