郵政民営化と小泉純一郎と竹中平蔵と・・・

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ジャーナリスト、田原総一朗氏と京都大学大学院教授で元内閣官房参与の藤井聡氏の対談本を読んでいて驚いた。

少々古い話になりますが郵政民営化に関することです。そこでは当時の小泉純一郎総理の論理なき民営化とそれに気付いていた竹中平蔵氏、それに気が付かずマスコミに踊らされた国民の姿がシニカルに描かれていたのです。



郵政民営化の無理筋


日本郵政が民営化される前、田原氏のもとへ竹中氏から電話がかかってきて会いたいと言われたといいます。

困ったことになったと。竹中氏は小泉総理から郵政民営化のために担当大臣になってくれと頼まれたというのです。

しかし、なぜ困ったのか?

竹中氏いわく、郵政民営化の必要はまったくないのだと。

小泉総理が郵政大臣のときに財政投融資(※)というものがあり、それに問題があったのだが、既にそれはなくなっており、もはや民営化する必要はないのだというのが竹中氏の考えでした。

※財政投融資
財政投融資は、政府が政策的見地から行う投融資活動のことをいう。これは、民間では困難な大規模・超長期のプロジェクトの実施や、民間金融機関では困難な長期資金の供給など、国の政策目的の実現のために行う政府の金融的手法による活動をいう。かつて郵便貯金の資金運用は大蔵省資金運用部に全額預託されており、この預託金利は市場より割高に設定されていた。そしてその差益は割高な貸出金利を特殊法人に貸し出すことで捻出され、その負担は特殊法人への税金投入という国民負担となっていた。しかし、1997年の第2次橋本内閣の財投改革により預託義務は廃止され、郵政公社は資金を自主運用することが求められる事となった。


無理筋でも屁理屈で正当化


ここからが人間が合理性でなく、情緒で動くことが如実にわかる展開となります。

では必要ないと言えばいいじゃないか、という田原氏の言に対し、竹中氏は小泉さんは頑固だからやるといったらやる、自分が反対してもやる、そして失敗する。

3週間で郵政民営化の理屈をまとめ上げるから待ってほしいと言ったといいます。

3週間後、田原氏は石原伸晃氏を伴なって、竹中氏の話を聞いたそうです。

しかし、2人とも竹中氏の説明(理屈)は全く理解できなかったとのこと。頭の良い人だから屁理屈を論理的に筋道立てて考えたのでしょうが、所詮無理があるものは道理が通らない。

結局、郵政民営化案は衆議院を通りませんでした。

衆議院解散が人質に


郵政民営化案は参議院でも否決されることは明らかでしたが、小泉総理は参議院で否決されたら衆議院を解散するというのです。

そして、その通り参議院でも民営化案は否決され、小泉総理は本当に衆議院を解散するという暴挙に打って出ました。2005年8月のことです。

しかし、多くの国民は道理に合わない解散をもろ手を挙げて支持したのです。

小泉政権は、衆議院で郵政民営化に反対票を投じた議員には自民党の公認を与えず、対立候補として刺客を送り込んだのは有名な話です。

そして選挙結果は・・・


なぜか自民党は圧勝しました。選挙前よりも議席を80以上伸ばし野党を圧倒したのです。

この小泉総理の政治手法は「小泉劇場」「ワンフレーズ政治」などと言われました。

郵政民営化の反対派を既得権益を守る悪代官に仕立て上げ、わかりやすい対立構造を作り上げた小泉総理の政治手法に国民はコロッと騙されたのでした。(私も恥ずかしながらその一人です。)

竹中氏は首を傾げていたでしょうが、選挙で勝ってしまった以上どうしようもない。国民の支持は得られ大義名分ができてしまったのです。

その後、郵政民営化は失敗だったとの声が多く、結果的には竹中氏の悪い予言どおりとなりました。

このような衆愚政治は今なお続いており、日本が良くなる気配が依然として見えないのは悲しい限りです。

魔女狩りの相手探し


それにしても一人の人間にここまで踊らされるとは実に驚きです。

特にデフレで人々の不平不満が高まっている際には、敵(悪者)を見つけて徹底的にいじめ抜くという政治手法が支持を得やすい。公務員いじめによる公務員削減は典型例だといえるでしょう。

以下は地方公務員数の推移です。

20210505koumuin.jpg
(出所:総務省)

右肩下がりの減少です。2020年4月現在では2,762千人となっており、さらに減少しています。

日本はもともと公務員の数は少なかったのにさらに減らされたのです。

20210505koumuin2.jpg
(出所:社会実情データ図録)

PCR検査数がなかなか受けられなかった、特例定額給付金の配布が遅かった、ワクチンの接種ペースが遅い、などという事実は公務員の数が少ないというのが大きな要因です。

保健所の数もデフレ化政策を始めた1997年以降、激減していることがわかります。

20210506hokenjo.jpg
(出所:新世紀のビッグブラザーへ(三橋貴明氏ブログ))

まともな行政サービスを提供するためにも公務員を敵視する風潮を止めなければなりません。そして日本は今までのデフレ化政策を止めて路線変更を図らなくてはいつまでもデフレから脱却できないのは自明の理です。

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