1年後の2022年、日本はデフレから脱却している(高橋洋一説)

ちょっと経済をかじった人ならば高橋洋一氏のことを知っていると思います。
東京大学の理学部数学科・経済学部経済学科卒業、大蔵省(現財務省)に入省した天才肌の経済学者です。
メディアにも数多く出演するとともに、数多くの著書があります。最近(2021年4月)にも新しい本を出したばかりです。
その本の中にちょっとうれしくなる内容があったのです。本当にそうなってくれればよいのですが・・・。
日本はもうすぐデフレ脱却?
本の題名は「国民のための経済と財政の基礎知識」です。
その中に以下のような記述があります。
「日本は長年にわたるデフレにあえいでいる(もうすぐ過去形になるだろう)。」
括弧内がおおいに気になる点です。過去形になるということはデフレから脱却するという意味ですから。
しかし、このような経済状況で本当にデフレから脱却できるのでしょうか?
そしてその根拠はいったい何なのでしょうか?非常に気になります。本当にデフレから脱却できるとしたら、それはおよそ25年ぶりとなるのですから。
このコロナ禍で足元の物価はデフレ状態が再びひどくなっているのが実態なのです。

(出所:新世紀のビッグブラザーへ(三橋貴明氏ブログ))
マネーストックとインフレ率の関係
高橋説によれば、マネーストック(※)の増加率とインフレ率には密接な関係があるといいます。
過去のインフレ率とその2年前のマネーストックの増加率には高い相関があるというのです。(ちなみに相関係数は0.89)
以下の図はここ最近のマネーストックの推移を表しています。

(出所:ニッポンの数字)
そして、ある年のマネーストックの増加率が2年後のインフレ率を決めるというのです。
さらに名目GDPも同様の関係にあるといいます。本当ならば心強い。
上のグラフを見てもらえばわかるように、マネーストックが急激に伸び始めたのは2020年4月以降。そこから2年後ということは2022年4月。来春となります。
高橋氏の言うことが確かならば、あと1年後から物価は上昇し、名目GDPの額も増加していくはずです。
(※)マネーストック
金融部門から経済全体に供給されている通貨の総量のこと。具体的には、一般法人、個人、地方公共団体などの通貨保有主体が保有する通貨(現金通貨や預金通貨など)の残高。マネーストックは、日本においては、現在、対象とする通貨の範囲に応じて、M1、M2、M3、広義流動性といった4つの指標がある。
金融部門から経済全体に供給されている通貨の総量のこと。具体的には、一般法人、個人、地方公共団体などの通貨保有主体が保有する通貨(現金通貨や預金通貨など)の残高。マネーストックは、日本においては、現在、対象とする通貨の範囲に応じて、M1、M2、M3、広義流動性といった4つの指標がある。
マネーストックが増えた理由
アベノマスクじゃなくてアベノミクス以降、日銀による金融の異次元緩和、具体的には日銀による国債の買い取りにより、マネタリーベース(※)は大いに伸びました。
しかし、マネタリーベースが増えてもマネーストックが思うように増えない。それは企業や個人がお金を使わないからであり、デフレから脱却できない一番の要因でした。

(出所:新世紀のビッグブラザーへ(三橋貴明氏ブログ))
ところがコロナ禍でマネタリーベースの増加以上にマネーストックが増加したのです。
なぜ今までマネタリーベースを増やしてもマネーストックが増えなかったのに急に流れが変わったのか?いくつかの理由が考えられます。
・個人が旅行に行けなくなるなどお金を使わなくなり、お金が預金とした滞留した
・企業が手元の資金繰り確保のために資金の確保に動いた
・特別定額給付金の支給
・企業が手元の資金繰り確保のために資金の確保に動いた
・特別定額給付金の支給
などです。
攻めというより、守りによるマネーストックの増加。これがアフターコロナの反動で消費にまわり、あるいは設備投資にまわるのかが物価上昇の焦点になると思いますが、高橋氏の本ではそこまでは触れられておりません。
あくまでデフレは終わると言っている以上、それを鵜呑みにするほかありません。眉に唾をつけながら。
(※)マネタリーベース
日本銀行が世の中に直接的に供給するお金のこと。具体的には市中に出回っている流通現金と日銀当座預金の合計値。マネタリーベースは日銀から民間金融機関に供給され、一般企業や個人への貸し出しの原資となる。
日本銀行が世の中に直接的に供給するお金のこと。具体的には市中に出回っている流通現金と日銀当座預金の合計値。マネタリーベースは日銀から民間金融機関に供給され、一般企業や個人への貸し出しの原資となる。
(個人の見解)高橋氏は癖のある人という印象
天才肌の高橋氏ですが、自己顕示欲が強くて虚栄心も強いといった印象もまたぬぐえない。自分の頭が良すぎて、ほかの人がアホに見えるのでしょう。
そして、最近はやりのMMT(現代貨幣理論)を大いに嫌っているようです。それはこんな一文から読み取れます。
「真実は、新しい理論の中にはない」
邪推ですが、MMTのことを指しているのではないかと推測します。またこのような一文もあります。
「私の学問的なバックグラウンドは、世界標準のマクロ経済学である。」
んー。マクロ経済学に世界標準なんてものがあるとは知りませんでした。だとしたら日本標準なんてものもあるのでしょうか。
またまた邪推ですが、そんじょそこらの日本の経済論者とは違うんだという自己顕示欲の表れであると思われます。
高橋氏の言を検証
本の中には以下のような記述もあります。
「実際に私は、第1次安倍政権のときに、官邸官僚としてこの策を日銀に納得してもらって円高を円安にしたことがある。」
本当に円安に振れているのでしょうか?
第1次安倍政権は2006年9月26日から2007年8月27日まで続きました。その間の為替相場の動きを見てみましょう。

確かに円安に振れている部分もありますが、それほどでもなく、政権発足時よりも退陣時のほうが円高になっています。
そして、その円安も後付けで自分がやったと言っている可能性もないではない。
一人の官僚が為替相場を動かすことなど本当にできるのかちょっと疑問符がつきます。
最後に
まあ、いろいろと検証すべき点は多いですがそれはまたおいおいということで。
とにかく高橋大先生の言うことが確かならば1年後に日本はデフレから脱却しているはずです。株価にも追い風が吹くことになります。
今後の動向を注視していきたいと思います。
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