コスト削減と適正株価を求め株式市場へ直接上場増加inアメリカ

投資家の金融リテラシーが洗練されていて、かつ自己責任が徹底されているから余計な審査は不要なのか、面倒な手続きが経済合理性に反していると考えているのかは不明ですが、アメリカで通常のIPO手続きを経ず、株式市場に直接上場するケースが徐々に増えているといいます。
いったい何が起きているのでしょうか。
直接上場という上場手段
アメリカにおいて通常のIPO手続きを経ないで株式市場に上場する「ダイレクトリスティング」が増加しています。
上場初日に新規発行した株式を市場で売却することで、上場時における資金調達も可能です。
通常のIPOであれば上場する前に新株を証券会社に引き受けてもらうことで資金調達します。
証券会社は引き受けた新株を投資家に販売することで新株引受のリスクを広く投資家に負担してもらっているわけです。
証券会社は一般の投資家に新株を販売する以上、その会社の内容について引受審査を行い適正な開示がなされているか、上場するにふさわしい会社であるかどうかを吟味するわけです。
ではなぜ今直接上場に目が向けられているのでしょうか。
理由は主に3つです。
理由1.手数料が安いこと
直接上場の場合、引受証券会社による審査を受ける必要がなく、投資家への説明会などを開催する必要もないため、上場コストが安くできます。またそれにより短期間での上場も可能となります。
理由2. ロックアップ(※)期間がないこと
IPOではロックアップ期間が定められるため、上場しても既存株主は株式を一定期間売却できず、資金の回収ができません。
しかし、直接上場であればロックアップ期間がないため、上場と同時に資金を回収できるというメリットがあります。
(※)ロックアップ
ロックアップとはIPOを目指す上場準備企業の既存株主が、IPO後においても保有している株式の売却を一定期間(90日もしくは180日)行わない旨を確約することまたはその制度をいいます。
ロックアップとはIPOを目指す上場準備企業の既存株主が、IPO後においても保有している株式の売却を一定期間(90日もしくは180日)行わない旨を確約することまたはその制度をいいます。
IPO直後に大規模な株式の売却が行われると適正な株価形成に悪い影響を与えることとなってしまいます。
このため、一般的に株価の安定的な形成に資するため、ロックアップという制度が設けられています。
IPO後においても、ベンチャーキャピタルや会社の大株主は一定期間株式を売却せずに継続保有する必要があるというわけです。
ロックアップには、主幹事証券会社と株主や新規上場会社との契約に基づくものと、証券取引所の規則に基づくものの2種類があります。
理由3.株価が不当に安く評価されるのを防ぐ
通常のIPOの場合、証券会社が新規上場会社の株式を引き受けて、その売れ残りリスクを負担するわけですが、価格が高ければ売れ残りのリスクが高まります。
そのため、既に上場している同業他社などの株価に比べ、公募価格や売出価格を幾分安く設定するのが普通です。いわゆるIPOディスカウントです。
しかし、これはこれから上場する企業の株主にとっては面白くない話。本来あるべき価値よりも安く株価が評価されることだからです。
そして、上場時にはその分、値が上がることが多いのですが、ロックアップがあるため売ることもできないという不満があるわけです。
日本のIPOの動向を見ても、上場初値が公募価格を上回る確率はここ数年9割程度で推移しており、IPOの抽選に当たればほぼ利益が出るといって構わない水準です。
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日本はどうか
意外なことに日本にも直接上場という手段はあるということ。
しかし、実際のところ活用は進んでいません。
唯一の事例として1999年に杏林製薬が上場した際に使われています。当時の杏林製薬では創業家一族が株式を保有していましたが、市場を通じて株式を売却したいという意向があり、上場による資金調達を求めていなかったという特殊な要因があるようです。
日本における株式上場の実態としては、証券会社の支援がないと上場にまでたどり着けない、あるいは証券会社の販売力に頼らないと会社の知名度も広がらないといった課題があるようです。
アメリカと日本の株式市場のすそ野の広さや制度の利活用にはかなりの開きがあるというのがわかります。
一概に日本が悪いとはいえませんが、アメリカは投資家のみならず、上場を目指す会社も自己責任が徹底しており市場原理主義が行きわたっているようです。
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