株安への道。株主至上主義・市場原理主義からの転機迫る

世界的なコロナ禍は富の格差をますます拡大させる結果となりました。
株式などの金融資産をたくさん保有している富裕層がさらに資産を増やしている一方で、貧困層は職を失うなどますます貧しくなるという悪循環です。
いよいよ庶民の我慢も限界に達しました。それを良識ある政治家は読み取り、富の格差を是正する動きが出てきました。
法人税の引下げ競争に歯止めが
G7において世界の法人税の最低税率を少なくとも15%にすべきというアメリカの案が支持されたといいます。
ここ数十年にわたり法人税は減税競争の波にさらされてきました。多国籍企業は法人税の安い国に本社を移し、もはや無国籍企業と化しています。
以下は世界主要国の法人税の実効税率です。

(出所:財務省)
法人税減税で得をした人々
法人税はなぜ下げられ続けたのか?
それはひとえに株主のためです。法人税が下がれば手元に残る利益が増える。それは株主のものだというわけです。
また、手元資金が潤沢で自社株が安いとみれば自社株買いで自己資本を減らしてROEを上げ株価の上昇を目指す。
企業経営者は株価が上がればストック・オプションで大儲け。株主にも喜んでもらって経営陣も安泰というわけです。
そしてその割を食らったのは労働者。アメリカでは経営者と労働者の所得格差は極限にまで拡大し、もはや同じ人間とは思えないレベルにまで広がってしまいました。
企業は利益の伸び以上に株主への配当を増やし、経営者の報酬をアップしながら、労働者の賃金を抑え込んできました。それは日本も同じです。
以下は資本金10億円以上の企業(金融・保険除く)の売上高・配当金等の推移です。

(出所:三橋貴明氏ブログ(新世紀のビッグブラザーへ))
その結果がもたらしたものは格差の拡大。以下は主要国のジニ係数の推移です。

(出所:社会実情データ図録)
数字が大きいほど格差が広がっているということです。
投資家の立場からは別の視点も
さて、いいことずくめのような法人税の最低限度設定案ですが、株式投資をしている投資家からすれば微妙な話となってきます。
今までの流れと逆の力が働くのですから。極端にいえば株主重視から株主軽視への転換となります。
当然、株価には下落圧力がかかりやすくなるといえるでしょう。
それでも投資家かつ労働者であれば、株で儲けにくくなっても賃金が上がりやすくなりますからそのメリットを享受できます。
働かずに投資だけで儲けている人にはつらい話ですが、世の中の流れは変わりつつあり、この流れを止めることはできそうにありません。
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今後の課題
今後の課題はG7の合意が広く他国に広がっていくかどうかです。
2021年7月にはG20があり、そこでの合意が得られるかが試金石となります。その後はOECDでの合意が得られるかどうかが焦点です。
どこかの国が抜け駆けをすれば結局、絵にかいた餅になりかねません。
また、既に15%以下の税率を採用しているアイルランドは今回の合意に反発するのは必至。今後の調整に手間取ることになりそうです。
最後に
行き過ぎた株主資本主義、新自由主義、グローバリズムといったものは力を失いつつあります。
今後、グローバリストの抵抗が予想されますが形成は不利と言わざるを得ない。いつまでも行き過ぎた新自由主義を続ければ社会はますますすさんでいくばかりだからです。
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