ネット証券業界、消耗戦に幕。auカブコム証券白旗上げる

砂漠

あまりにも無謀だったのか。

2019年12月にauカブコム証券は株式信用取引の売買手数料を無料化したのでした。

将来的な現物取引の無料化も示唆していたのですが、ここに来て業績は急降下。路線変更を余儀なくされたのです。






auカブコム証券の路線変更


信用取引手数料無料化後、auカブコム証券の業績は急降下しました。2020年4~6月期には最終赤字に転落・・・。ここ最近の株高でも業績は伸び悩み、いよいよ我慢の限界で路線変更に踏み切ったというわけなのです。

auカブコム証券はもともとネット証券業界では5位と中途半端な存在であり、存在感が薄かった。

そこで話題作りの客寄せパンダで手数料無料化をぶち上げましたがその目論見は見事に外れてしまいました。

auカブコム証券のDNA


auカブコム証券は、その昔、日本オンライン証券という名称だったと記憶しています。システム屋上がりの社長が自前で証券システムを構築してネット証券業界に参入したはずです。

しかし、やはりシステム屋ではマーケテイング能力に限界があったといわざるを得ない。

また創業社長はかなりのパワハラ社長でもあり、社員は恐怖すら感じていたようです。

カブドットコム証券時代の2007年には同社社員によるインサイダー取引が問題となりました。その際の外部有識者による特別調査委員会の報告がそれを表しています。

「過度にメールに依存した文化」

「こうしたメール文化は、リアルの世界で構築された会社の組織(とりわけ部長等の中間管理職の役割)を無機能化させ、すべての役職員が社長と直に繋がっているといった企業風土を作り出していた」

「一言で言えば、社長は部下を信じ切れずにいた。そのため、社長は社内(時にはアフター・ファイブ)の出来事をすべて掌握したいという思いが強く、これがメール文化を生み出し、ひいては管理される役職員の側にも、社長の顔色や社長の評価を気にする風潮をもたらしていた。時折、社長は、他の役職員の面前であからさまに役職員を叱り付けたり、アフター・ファイブにおける同僚との行動を承知していることを匂わせたりすることによって、やや過剰に役職員を精神的にコントロールしていたが、このことは、メール文化と相まって、疑心暗鬼に陥る役職員を生み出していた」

「社長個人の気質としていらだつと手がつけられず、『病院行くまでやれ』、『死んでもらう』、『イヤならさっさとやめろ』などの発言は日常茶飯事的にあり、何か失敗をすると簡単に社内処分が下される」

「このアンケートに真面目に答える(真実・感じたことを忌憚なく伝える)こと自体が、恐怖であると強く感じることを付け加えさせて頂く」

もはやワンマンの域を超えた独裁専制経営者といった印象です。

そして創業社長は2021年3月に退任したのでした。

後任にはKDDIの傘下であるauフィナンシャルホールディングスの専務が着いたのです。

しかし社長が交代しても業績がV字回復することはなく、やむなく手数料無料化を打ち切らざるを得なくなってしまいました。

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手数料値下げ競争に終止符


ネット証券の仁義なき値下げ競争もいよいよ終末期を迎えたようです。

SBI証券が25歳以下の顧客の株式手数料を無料化しましたが、追随したのはごく一部のネット証券のみ。

業界2位の楽天証券は追随しませんでした。楽天証券は楽天経済圏によるポイントの魅力で若者の心をつかみ、口座数の伸びはSBI証券を上回っています。

無茶な消耗戦には参入する必要はないと判断したのでしょう。

最後に


思えば日本の証券業界は手数料自由化の波とインターネットの爆発的普及という2つの波を同時に受けることになり、業界再編が一気に進みました。

今後は単なる価格競争ではない差別化が求められ、差別化ができない証券会社は埋没していくものと考えられます。

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