ステルス顧客情報共有。銀行と証券の垣根はますます低く

プライバシー

1993年、銀行は証券子会社を作り、証券業務に参入することが可能となりました。それ以降、銀行と証券の垣根はどんどん低くなっています。

そして、ついに顧客情報の共有までもが顧客の知らない間に行われるようになりそうです。





銀行と証券会社の垣根は低く


1993年の規制緩和以降、1999年には銀行と証券会社の社員が同行して顧客を訪問できるようになりました。

その後、2002年には銀行と証券会社の共同店舗が解禁されています。

垣根が一段と低くなる


そして今回の規制緩和案で金融庁はグループ内の銀行と証券会社で顧客情報の共有を解禁する案を打ち出してきました。

とはいえさすがに個人の情報までを共有するのは刺激的。当初は大企業の顧客のみを対象とする方針です。

同一金融グループ内で融資や新株、社債の発行、M&Aの助言業務などのサービスを網羅的に提供できるようにすることが目的であろうと考えられます。

金融庁は2021年中にも制度の詳細を詰めて内閣府令に落とし込みスタートしていく方向です。

制度改正の目的


金融庁が制度改正を急ぐ理由は、金融機関の体力を高めて国際競争力を上げるという狙いもあるようです。

金融グループが一体となって有機的なサービスを提供することにより、顧客企業の成長を手助けするという側面もあります。

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大いなる問題点


一方で問題点もあります。

金融庁が考えているスキームでは、銀行があらかじめホームページなどで証券会社と情報を共有する旨を記載しておけば、顧客に通知をする必要はありません。

情報共有を望まない企業は銀行にその意思を伝える必要があります。個人情報保護法上のオプトアウト(※)の仕組みとそっくりです。

また、金融グループ内の情報共有が他の顧客との利益相反にならないよう管理をする必要があります。

融資が焦げ付きそうだという情報を共有した証券会社が企業に社債を発行させて他の顧客に販売し、実質的に信用リスクを他の顧客に押し付けることがないようにする必要もあります。

(※)オプトアウト
事前に知らせておくことで、個人情報の第三者提供について本人が同意したものとみなして個人情報を第三者に提供すること。本人が希望すれば第三者への提供は停止される。

最後に


金融機関との情報格差が小さい大企業であれば、それなりの対応が可能かと思いますが、このスキームが個人にまで落とし込まれることは大きな問題をはらんでいます。

知らない間に銀行が保有する個人情報が証券会社に流され、わけのわからない仕組債や複雑な投資信託を売り込んでくる可能性があるからです。

お人好しのお年寄りなどはコロっと騙されてしまう可能性もあります。

知らない間に個人情報が第三者の手にわたるようなスキームは大きな問題を抱えていると考えざるをえません。

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