東南アジアの日本車の圧倒的シェアも切り崩される

蒸気機関車

タイ、インドネシアでは日本車のシェアがなんと9割にも上ります。そして、その大半はガソリン車です。

しかし、実現可能性への疑問や本当に環境に良いのかなど賛否両論があるというものの、時代の流れはEV(電気自動車)へとシフトしているのは事実です。

そしてその潮流に乗って中国、韓国の自動車メーカーが日本車の牙城を切り崩しにかかっています。

放っておけば日本車のシェアはどんどん落ちていくに違いありません。






タイには中国メーカーが攻め入る


中国の自動車メーカー、「長城汽車(中国最大の自動車メーカー)」はタイから撤退したアメリカの自動車メーカー、GMの工場を2020年に買い取りました。

その工場に最新鋭のロボットやAIを導入して今後3年間でEVを含めて9車種を投入し、タイ市場での日本車の圧倒的シェア独占に風穴を開けようとしています。

2021年6月にはHV(ハイブリッド車)の生産を開始。2023年までにはEVの生産も開始する予定です。

HVは日本メーカーの独壇場と見られてきましたが、トヨタが中国メーカーにHVの基幹システム技術を供与するという愚策で、その技術はどんどんかすめ取られており、新幹線と同じことが起きています。

トヨタは一時の利益のために長期的な利益を失う羽目になるでしょう。

タイは東南アジア最大の自動車市場


もともとタイは東南アジアでトップの自動車市場です。

そして、タイ政府も世界の流れに沿って、2030年までに自動車の3割をEVにする目標を掲げています。

現状ではタイ国内ではEVの生産はしておらず、輸入販売も低調。しかし、低調とはいえ、すでにそのシェアの6割を中国メーカーが握っているのです。

今後、現地生産が始まればEVシフトが加速していく可能性が高い。日本メーカーは東南アジアの自動車産業のパラダイム・シフトから取り残されつつあります。

インドネシアでも同様の動き


また東南アジア2位の市場であるインドネシアでもタイと同様の動きが広がっています。

こちらは韓国のヒュンダイ自動車が攻め入っています。2021年にもガソリン車の現地生産を開始し、2022年にはEVの生産を開始する予定です。

インドネシアもタイ同様、今後20%の自動車をEVとする目標を掲げています。

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日本メーカーにいら立つ両国


それにしてもなぜタイ、インドネシアは日本車のシェアが圧倒的なのに、中国や韓国の自動車メーカーを誘致するのでしょうか。

そこには日本メーカーの動きの鈍さがあります。

EVにシフトしてもその元となる電力の発電は火力発電であり、CO2の排出は減らないという論理を展開し、日本メーカーはEVへのシフトを行わない。

理屈は正しくても、世界は理屈どおりには動かない。日本メーカーがやってくれないなら、他の国のメーカーにたのむというビジネスの世界では至極真っ当なことが行われているだけなのです。

東南アジア諸国からすれば当たり前のことです。

日本メーカーはシェアの大きさに胡坐をかいているともいえ、その油断はいずれ後悔に変わる可能性が高いと考えておかねばならないでしょう。

車載用の電池市場でも日本メーカーの凋落が始まっています。

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(出所:経済産業省)

2013年には75%を占めていたのにわずか3年で31%にまで急落してしまいました。

日本メーカーにもようやく危機感が


海外メーカーの動きや世界のトレンドの変化からようやく日本メーカーも危機感を募らせているようです。

トヨタは子会社であるダイハツ、資本提携をしているスズキに声をかけ、次世代自動車の開発のための共同出資会社への出資を募りました。

もともと資本力の小さい2社にとっては渡りに船。単独でEV市場を切り拓くのは厳しい状況の中で、巨大資本のトヨタと組めるというメリットは大きい。

しかし、そのトヨタとて安閑とはしていられないほど時代は変化しつつあります。

トヨタは現状、四半期決算で最高益を記録するなど絶好調にありますが、時代に取り残されれば今が最後の晩餐となりかねないリスクを抱えています。

また前述のとおり、新幹線の技術が中国に乗っ取られたのと同様のことが起きますから、競合先が増えることは間違いありません。

EVを意識した日本電産の動き


今後の成長が確実視されるEV市場を虎視眈々と狙っているのが、世界的モーター企業である日本電産です。

EV向けモーターを今後の成長の柱と位置付けており、台湾の鴻海と合弁会社の設立予定です。

佐川急便は国内での配送に中国メーカーのEVを採用する予定であり、そのEVに載せられるモーターは日本電産製なのです。

日本メーカーであっても、海外の自動車メーカーにモーターを販売していく。ビジネスの論理でいけばそれもやむを得ないことです。

日本の自動車メーカーが日本もモーター会社にこうべを垂れる日が来そうなのです。

そして、内燃エンジン車は蒸気機関車が電気機関車にとって代わられたのと同様、徐々に駆逐されていく流れはほぼ出来上がってしまいました。

30年後、ガソリン車は蒸気機関車同様、過去の歴史となりそうです。

最後に


成熟した内燃エンジン車の技術は素晴らしい。そして、日本とドイツがその勝ち組です。しかしそれを良しとしない国がある。

ゲームのルールを変えるために利用されているのが地球温暖化とCO2というわけです。

そしてゲームのルールは本当に変わってしまいました。

その現実を受け入れず、過去のしがらみにとらわれ過ぎれば日本はまたもやガラパゴス化し、世界から取り残されることになるはずです。

ヨーロッパではすでに新車販売の約10%が電気自動車になっています。

ガラパゴス化の典型例は携帯電話でしょう。

今や日本メーカーは世界でまったく存在感がない。かつてガラケーで成功し、それにこだわったことからスマホへの展開が遅れたとしか考えられません。

盤石と見られた日本の自動車メーカーも家電メーカーと同じ轍を踏みつつあります。

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