コロナ禍で緊縮財政の病から抜け出せないのは日本のみ

コロナ禍における世界各国の経済対策に、政治家や官僚といった、その国のリーダーともいえる人間の国民を思いやる心が如実に表れているといえます。
このような危機においては財政赤字などには目をくれず、とにかく国民を助けなければ仕方がない。それなのにこの日本ときたら・・・。
世界共通の認識
IMFでさえ、このような緊急事態では世界各国に積極的な財政拡大と金融緩和を呼びかけており、自国のみならず世界経済に貢献するよう求めています。
アメリカのイエレン財務長官はG7で各国に対し、積極的な経済政策を要請しました。
世界はウイルスによる被害もさることながら、放っておけば経済的にも瀕死の停滞を招きかねないという危機感が共有されています。
しかし、どうやら日本だけは例外のようです。
将来世代にツケを残すという嘘
2020年度予算では、なんとコロナ対策で用意された予算の30兆円を使わずに余らせてしまうという始末。
単純に考えて10万円の特例給付金をあと2回配布しても余る計算なのです。それなのに放置プレーで何もやらない。
そして、2021年度の補正予算で30兆円を計上するなどという話が出てくる始末。
単に繰り越したお金を使おうっていうだけで実質ゼロ回答なのです。
挙句の果てには「コロナ復興税」などと言いだす頓珍漢もいるし、いまだに政府はプライマリーバランスの黒字化を目指すなどと時代錯誤なことを言っているのだから国民は救われない。
彼らの決まり文句は「将来世代にツケを残すな」です。
しかし、減税を行って、財政拡大しなければ将来世代に砂漠を残すことになるでしょう。
日本人の貧困化に拍車をかけていくだけです。日本人が世界に比べていかに貧困化したか。以下のグラフを見れば明らかです。

(出所:全労連)
日本停滞の3大戦犯
日本の財政緊縮病が悪化したのは橋本政権下の1997年です。
1997年には主要先進国の中で日本は一人あたりの名目GDPはトップだったのです。
●1人当たりの名目GDP

(出所:世界経済のネタ帳)
その後、見るも無残なばかりに落ちぶれて、今や最下位転落です。
この責任は3者にあります。「政治家」「財務省」「日本銀行」です。
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財政緊縮病による死者
新型コロナの死者は2021年8月12日現在で15359人となっています。確かに少ない数ではありません。
しかし、財政緊縮病で死んだ人はコロナの死者と比べ物にならないくらい多い。
重度の財政緊縮病によるデフレは1998年から2013年まで続きました。
そしてこの間に増加したのが自殺です。
以下は1990年から2018年までの自殺者数とGDPデフレーター(※)を示しています。

赤い箇所は自殺者数が3万人を超えた年を示しています。見事なまでにGDPデフレーターとの相関があります。
1990年~1997年までの自殺者数の平均は22250人、1998年~2011年までの自殺者数の平均は32360人となります。
(32360人-22250人)×14年=141540人
約14万人は上記3者による失策、無策により自殺に追い込まれたと推測することができます。まともな経済対策をしていれば自殺しなくてもよかった14万人です。
期間が違うとはいえ、新型コロナ死亡者の10倍近くとなります。しかも新型コロナで亡くなった人はほとんど高齢者ですが、自殺者は高齢者に限らないという残酷さを考慮しなければならないでしょう。
以下は2019年の年齢別自殺者数です。

(出所:ニッポンの数字)
高齢者よりも若い世代のほうが自殺は多いという点に注目しなければなりません。
(※)GDPデフレーター
物価の変動を表す物価指数。名目GDPを実質GDPで割って求める。GDPデフレーターの増加率がプラスならインフレ、マイナスならデフレと考えることができる。
物価の変動を表す物価指数。名目GDPを実質GDPで割って求める。GDPデフレーターの増加率がプラスならインフレ、マイナスならデフレと考えることができる。
次の首相に期待するほかない
財政緊縮病が再び重症化すれば新型コロナ以上の死者を発生させる可能性が高い。今なお病は治癒しておらず、小康状態のままなのです。
アベノミクスというそれらしい言葉にコロリと騙されましたが、実質的に働いていたのは黒田総裁率いる日本銀行だけだったというのが実態です。
安倍政権は日本銀行を利用しタダ乗りしただけだったのです。(黒田日銀以前は日銀も役立たずでしたが)
その状況は菅政権になっても一向に変わる気配を見せずむしろ悪化していると言ってよいでしょう。
自民党総裁選に高市早苗氏が立候補の意思を示しているとか。聡明な方のようであり、菅首相よりもよほど期待できそうです。
菅首相では選挙をまともに戦えないでしょうから、菅おろしが始まるのは間違いない。再選しないことを祈ります。とにかく次の首相に期待するほかありません。
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