日本特有の毎月分配型投資信託の分配原資に見る異常性

日本の投資信託市場も洗練されてきており、世界各国で販売されている様々な形態の投資信託はほとんど日本でも購入可能となっています。
逆に日本には世界にはない独特の形態の投資信託があります。
それは「貧すれば鈍する」「溺れる者は藁をもつかむ」といった弱みに付け込んだような投資信託であり、デフレがその根源となったとしか思えません。
毎月分配型投信の栄光と挫折
今でこそ一時期の隆盛は去りましたが、今から10年前の2011年末には日本の投資信託のうち、なんと7割が毎月分配型の投資信託でした。
毎月分配型の投資信託が登場したのは1997年です。
グロソブなどと言われたグローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)は2008年にはなんと純資産額が5兆7千億円にも達し、その額は世界でも5本の指に入るほどの人気商品でした。
しかし、その後はじり貧を続け、現在は約3千5百億円弱となっており、最盛期の10分の1以下に残高は急減してしまいました。もはやその存在感はないに等しいほどです。
じり貧の2段階ロケット
グロソブが落ち目となった要因は2段階に分けられると思います。
第1段階としては、グロソブよりもより高い分配金を出す投資信託が雨後の竹の子のように現れ、グロソブから他の投資信託へ乗り換えが進んだことです。
いわゆる後出しじゃんけんです。
長引くデフレで金利が消滅する中、少しでも多くの分配金を求めた初心な投資家はどんどん他の投資信託へ乗り換えていったわけです。
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無謀ともいえる分配
第2段階は、ほとんどの毎月分配型の投資信託が本来の実力を超えた無謀な分配を行ったことによります。
毎月分配型投信の多くは市況の悪化などにより新たな資金流入が止まる、あるいは保有している有価証券に損失が発生するなどの要因で、分配金を下げざるを得なくなるときが来ます。
分配金が減る⇒投資家が失望売りを出す⇒さらに分配金が出せなくなるという負のスパイラルが回りだし、毎月分配型の投資信託は一気にその支持を失いました。
毎月分配型投信のシェアはみるみると下がっており、2018年末時点では4割を切るまでに減少しています。
ようやく日本人も毎月分配型の投資信託が複利効果を薄めさせて投資効率を悪化させることに気が付き始めたようです。
分配原資の異常性
もう一つ、日本の投資信託市場には特有の問題があります。
それは分配金の原資となる元手です。
以下は主要国の分配可能となる原資の比較です。

日本では驚くことに有価証券などの評価益までをも分配の原資とすることができます。
利食い千人力という言葉がありますが、利食いをする前に評価益で豪遊するようなものです。
評価益はいつ評価損に変わるかわからない。そんな当てにできない金額までも分配金として支払うことができるのはある種異常に思えます。
高い分配金で客寄せし、その期待を見事に裏切るという構造が出来上がっています。
終わりに
貯蓄から投資へと叫ばれて早数十年。しかし、金融業界はその期待に応えてはきませんでした。
ようやく最近少しはマシになってきたと思われますが、投資信託の分配原資については見直しの余地が大いにあるといえます。
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