上場地方銀行の一部。東証プライム市場からの実質追放を迫られる

金庫

商売上、信用や信頼がひときわ求められる業界といえば銀行業界でしょう。

現状、異次元金融緩和の継続により銀行業界の経営環境の厳しさは依然として続いています。

ところで2022年4月から東京証券取引所の市場再編により、現行の市場区分が変更になります。

現在、東証1部に上場している一部地方銀行が、新市場区分で最上位市場となるプライム市場から実質追放となりそうなのです。プライドの高い銀行員としては天狗の鼻を折られる気分なのではないでしょうか。






新東証市場区分


東証の市場区分は以下のように変更されます。

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2021年6月末を基準とし、現上場会社に新市場ではどの区分にあたるのかが7月に通知されています。

東証によれば現在の1部上場企業のうち、約3割がプライム市場の基準を満たさなかったということです。

当初の目論見ではプライム市場はもっと厳格な上場基準で選別色を高める予定であり、選りすぐりの企業だけが選ばれる方針でしたが、一歩後退しました。

市場再編は骨抜き化


後退の理由は既存上場企業からの反発です。東証1部からスタンダードへ移行すれば実質的に格下げと見られ、企業価値が毀損すると考える企業が多かったということです。

さらに骨抜きとなっているのは、プライムへの移行基準を満たしていない企業でも、2021年12月末までに改善のための報告書を提出すれば当面の間、プライム市場に残ることができるという点です。

もっとも、当面の間というのがいつまでを指すのかが明らかとなっておらず、改善報告書を出すか出さないかの判断には相当迷いが生じることは間違いありません。

プライム市場上場はコストがかかる


なにしろ、プライム市場に残るとなれば企業開示やガバナンスに関するハードルは一段と高くなります。

英文開示が義務付けられたり、社外取締役を3分の1以上にしなくてはならないなど、明らかに海外の投資家を意識した体制づくりが求められます。

それにかかるコストは馬鹿にならない金額となるでしょう。そんなコストをかけてまでプライム市場に残りたくないと考える企業も多いはずです。

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上場地銀の憂鬱


ところで、上場地銀のうち約2割がプライム移行基準を満たさなかったといいます。

収益環境が厳しいことから株式時価総額も低くなっていることが一番の要因でしょう。

以下は地方銀行の収益の推移です。

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(出所:全国地方銀行協会)

10年もの長期国債の利回り推移からも異次元金融緩和が進んだ2010年代半ばから低迷を続けていることがよくわかります。

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ここで無理してプライムに残ろうとするか、あきらめてスタンダードで我慢するか、経営陣は大いなる決断を迫られることになります。

終わりに


株主としては、見栄をはらずにスタンダードでもいいではないかと思う人も多いのではないでしょうか。

どのみち、もともと海外投資家からの買いが入らない零細銀行が英文開示など行ったところでとうしようもない。

また、素人同然の社外取締役などのお飾りも不要でしょう。余計なコスト負担が増すだけです。

そんなことをするくらいなら配当で報いてもらいたい。そう考える投資家が多いだろうと推測します。

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