投資信託の保有動向からもアメリカの株主至上主義が浮かび上がる

株主第一主義ともいえる経営を行っている企業が多い国といったらアメリカでしょう。
余裕資本があればすぐに自社株買いをしてROEの上昇を目論む。その目的はもちろん株価の上昇です。
従業員の給料は安く抑え、経営者はストックオプションによる株価上昇で莫大な富を得る。
従業員と経営者の間に鉄条網が張られたようなギスギスする経営の一端が企業の余裕資金運用にも顕著に現れています。
強欲なアメリカの経営者
以下はアメリカの経営層の報酬の推移です。

(出所:金融庁)
1990年頃からの伸びが著しいことがわかります。
これは1990年ころからストックオプションの付与が急速に進んだことと大いに関連があります。
以下はアメリカの大企業の株式に占めるストックオプションの比率の推移です。

(出所:日本銀行)
そして、経営者に対する報酬の中でストックオプションの比率がどんどん上がっていることがわかります。

(出所:金融庁)
とにかく多くのアメリカ企業は経営者にストックオプションを付与し、自社株買いをして自己資本を減らしてROEを上昇させて株価を上げることに腐心してきました。
また、物言う株主への配慮から配当もどんどん増やしましたが、従業員の給料は一向に増やさないという血も涙もない経営を続けてきました。
投資信託にみる株主至上主義
ところでアメリカといえば投資信託の残高が大きいことでよく知られています。
しかし、その残高の半分以上は個人が占め、事業法人の保有比率はわずか4%程度と低くなっています。ちなみに日本は11%程度となっています。
なぜなのか?
ここでもアメリカの株主至上主義にその原因を求めることができます。
投資信託なんぞで運用する資金があれば株主に還元せよ、あるいは自社株買いをして自己資本を減らして株価上昇に努めよ、という株主からのプレッシャーがあるわけです。
そのプレッシャーは経営者にとっても都合が良い。
なにしろ自身にはストックオプションが付与されており、株価が上がれば自分もウハウハだからです。
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従業員切り捨ての株主至上主義
しかし、アメリカ型経営は自己資本を減らすことを善としているために、危機の際の耐久度は極めて低い。
それはコロナ禍の失業率に顕著に見ることができます。

(出所:社会実情データ図録)
苦しくなれば、ゴミ箱に捨てるかのように従業員をクビにするわけです。
最近の株価下落要因は・・・
ところで岸田政権は新自由主義からの脱却を目指すといいます。
これは市場原理主義からの解放であり、従業員にとっては吉報だといえるでしょう。株主至上主義とは一線を画すものだからです。
一方で株価にとってはマイナスに働くという負の側面もあります。株主よりも従業員の立場を強くするということだからです。
ここ最近の株価の下落は、岸田政権の新自由主義からの脱却、そして金融所得課税の強化の懸念が一因となっていると考えられます。
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