銀行業界、緩慢な死か、縮小均衡スパイラルかの2択を迫られる

選択

50年間も値段が変わらないというのは異常としかいいようがありません。

振込の際に銀行間でやり取りされる銀行間の手数料は全国銀行データ通信システム(全銀システム)稼働以来、一度も変更されることなく最近まで固定化されていました。

2020年に公正取引委員会による報告で問題が浮き彫りとなり、ようやく銀行業界も動き出しました。しかし、それはほんの序章にすぎなかったのです。






驚くべき伝統芸能的社会


1973年に全銀システムが稼働してから50年弱、銀行間の送金手数料は3万円以上が162円、3万円未満は117円と固定化されていました。

3万円以上の振込があった場合、銀行は全銀システムに162円を払い、送金を受けた銀行は全銀システムから162円をもらっていたということです。

振込手数料の原価ともいえ、これを最低ラインとして銀行の取り分を上乗せして振込手数料が決まっていたというわけです。

だから振込手数料が162円未満には下がりようがないという制約の中で消費者は選択肢のない社会を生きてきたわけです。

公正取引委員会動く


しかし、これに待ったをかけたのが公正取引委員会。

全銀システムを使えるのは預金取扱金融機関に限られており、価格は固定。これが独占禁止法上問題なのではないか、またフィンテックなど新たな金融テクノロジーの発展を妨げているのではないかと問題視したわけです。

これはもっともな指摘といえ、銀行業界はしぶしぶ対応し、全銀システムの銀行間手数料を一律62円にまで引き下げることとなりました。

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銀行業界も一部で動き出す


また、この動きとは別にメガバンクを中心とした一部銀行が手を組み、新たな送金インフラの構築を目指しています。

三菱UFJ、みずほ、三井住友、りそな、埼玉りそなの5銀行が主導し、10万円以下の少額に限られるものの新たな送金プラットフォームを作り、サービスを提供していく予定です。

これは携帯電話の電話番号やSNSのID、電子メールアドレスなどを使った新たな送金サービスです。

明らかにスマホ送金サービスなど、既存の少額送金業者に対抗する動きだといえるでしょう。

送金手数料価格破壊


驚くのはその手数料の安さです。

5行が他の地方銀行などに提示した銀行間手数料は1.15円から4.5円。従来の10分の1以下の水準です。

このプロジェクトが成功すれば、銀行が受け取る振込手数料は劇的に減少することになるはずです。

アメリカでは既にこのような動きが始まっており、意外なことに手数料は減少しましたが銀行の収益は改善したというのです。

なぜかといえば、振込にかかっていた人件費や費用を減らすことに成功したからです。

日本の銀行の行く末


さて、日本の銀行はどう出るか。

今まで同様に安い手数料で振込を受け続ければ収益は悪化するはずです。ただでさえ銀行を取り巻く環境は厳しい。

とりわけ最近は地方銀行に対する風当たりが強いわけですが、それは業態別の金融機関数の推移を見れば理解できます。

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地方銀行以外は激しい合従連衡を余儀なくされましたが地方銀行は中途半端になんとか持ちこたえてきました。しかし、それも限界に近づいてきたと考えられます。

従来路線をひた走れば収益基盤は減る一方で、やがて経営は立ち行かなくなるに違いない。

一方、不採算事業を切り捨てていけば収支の帳尻はなんとか合わせることができるかもしれませんが、ひたすら縮小均衡路線を突き進むことになるはずです。

今まさに銀行業界は緩慢な死を選ぶか、縮小均衡への道を選ぶかの選択を迫られているといえます。

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