派遣労働の解禁と消費税導入は株主資本主義者の策略

労働

労働者を集め、仕事場に送り込む人材派遣業的なものは遥か昔むかしから存在しておりました。

手配師と呼ばれる者が日雇労働者などを引っかき集めて、工事現場などに送り込み、その賃金をピンハネしていたのです。

やがてそれは人材派遣業などともっともらしいネーミングを得て、市民権を得たかの如く振舞っていますが、やっていることは手配師とほとんど同じであり、ビジネスモデルの本質はピンハネにほかなりません。






派遣労働増加のきっかけ


派遣労働者は、第1次オイルショック後の1975年頃から急速に増え始めました

もちろん、派遣労働者を雇う目的は好きなときにクビを切れるから。人手が不足すれば出前を頼むが如きに派遣社員を注文し、用が無くなれば容赦なく切り捨てる。

いわば疑似奴隷労働であり、人が人を買う人身売買と似たようなもんです。

その後、疑似奴隷労働にも一定のルールが必要だということで、1985年に誕生し1986年に施行されたのが労働者派遣法といわれる法律です。

バブル崩壊後の便利ツール


その後、バブル崩壊にともない企業は正社員を雇うだけの余力がなくなったことから派遣社員がいわば使い捨ての”道具”としてフル活用され続けています。

以下は1990年からの非正規雇用者の比率を示しています。

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(出所:社会実情データ図録)

全世代的に非正規雇用は増加傾向にありますが、とりわけ若年層にその傾向が顕著に現れています。

就職氷河期でやむを得ず派遣社員になるほかなかったという人が多くいたのだろうと考えられます。

その時々の景気によって人生そのものが左右される。不公平極まりますがそれが悲しい現実の社会です。

派遣社員のストレスは半端ない


派遣労働が奴隷労働に近いことは、雇用形態ごとのストレス度合を見れば一目瞭然です。

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(出所:社会実情データ図録)

同じ非正規とはいえ、パートタイマーとは雲泥の差であることがわかります。

このことから、望んで派遣社員になっている人が少ないこと、パートタイマーの多くが主婦であり、夫の稼ぎという柱がある一方、派遣社員は自らが柱になっているのであろうことが推測できます。

そして、いつ切られるのかわからない。まるで死刑宣告を待つ死刑囚のようです。

いくら頑張っても切られるときは冷酷非道に派遣切りという憂き目にあう。

そしてそこに残るものは虚しさ以外何もありません。

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派遣社員と消費税


ところで話は変わりますが、日本で消費税が導入されたのはバブル絶頂期の1989年でした。

労働者派遣法の誕生と消費税の導入がほぼ同時期だというわけです。

この2つは一見なんの関係もないように思えますが、株主重視の株主資本主義者にとっては会社の利益を増加させるという点でいわば車の両輪であり、その相乗効果は極めて高いものでした。

派遣社員は単なる経費扱い


一般人の感覚では消費税は税金を企業に一時的に預けているだけであり、企業は預かった消費税を税務署に納めていると考えがちです。

しかし、実際は企業が支払っている経費に対して負担した消費税と相殺されるため、実際の納税額は小さくなります。

ところで問題となるのは、派遣社員に払う報酬は通常の人件費と違い、経費となるため企業が支払う消費税を少なくすることができ、その分利益を増加させるという点です。

具体的に見てみましょう。

以下のような企業があったとします。

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正社員の給与を1000万円増やすと以下のように変化します。

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利益は1300万円から300万円に減少します。

では、正社員の代わりに派遣社員を雇って1000万円払うとどうなるでしょうか。

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経費が1000万円増え、相殺できる消費税が100万円増加します。

正社員の給与を1000万円増やした場合には消費税を700万円納めねばならないところ、派遣社員だと600万円に減少し、結果、利益は100万円増えることになります。

最後に


利益が増えるうえに、業績が悪化すれば好きなときに捨てることができる派遣社員は、株主資本主義者、利益至上主義者、新自由主義者にとって、格好のツールとして活用されてきました。

また、それは同時に正社員の人件費抑制というインセンティブを発生させます。

非正規雇用の増加と反比例して、日本の賃金が減少し続けていることがわかります。

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(出所:全労連)

派遣社員と消費税の関係・・・。明らかにおかしな関係であると思わざるを得ません。

これは消費税を減税することで改善されますが、そのことには政権与党の誰も触れないのであります。

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