タリー・レポートによってアメリカ株は上昇トレンドに乗った

1990年代半ばから、アメリカ株はまるで飛行機が離陸するかの如き上昇を続けています。
その原動力はさまざまであろうかと思いますが、タリー・レポートがその原動力の一つであることは間違いないと考えられます。
タリー・レポートにより投資家は安心して長期投資に足を踏み入れることができたのです。
タリー・レポートとは
1994年、SEC(証券取引委員会)の要請により、個人向けの証券仲介に関する利益相反を明らかにし、その相反を少なくするための最良の方法を検討するために、ダニエル・タリー氏を委員長とする委員会が設けられました。
その背景として当時、出来高報酬制の証券外務員が、顧客に過当な回転売買を勧めているのではないかという懸念がありました。
1995年に出された報告書(タリー・レポート)では、手数料や報酬の体系として、投資家と外務員そして証券会社の利害が一致したものが最良の制度として定義されました。
具体的手法として、顧客の資産残高に応じた報酬の一部を外務員が受け取る方法が示されています。
そのような手法であれば、外務員が今は売買すべきでないと判断した際にも顧客に無理に取引を勧めることなく、報酬が得られるとタリー・レポートは主張しています。
タリー・レポート後の投資信託市場
タリー・レポートが出された後の投資信託市場は残高積み上げが重視されることとなり、合わせて投資信託販売時の販売手数料無料化が進展しました。
以下はアメリカにおける2000年以降の投資信託残高の推移です。

(出所:金融庁)
赤いラインは手数料無料(ノーロード)の投資信託の比率を示しており、青いラインは手数料が有料の投資信託の比率を示しています。
もはや販売手数料は無料が当たり前といってもよく、残高に応じた信託報酬こそが安定収益源となっていることがわかります。
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株価上昇という相乗効果
無茶な回転売買をしないから顧客からの信頼を勝ち取ることができたアメリカの証券会社は着実に顧客の資産を取り込んで、株式市場に資金を供給したため、株価は大いに上昇したものと考えられます。
以下は1980年以降のNYダウの株価推移です。

(出所:世界経済のネタ帳)
タリー・レポートが出された1995年以降に株価が大きく上昇しているのがとても偶然には思えません。
投資家、外務員、証券会社がWIN-WINの関係となり、それが株価上昇という実りをもたらしたと考えれることができます。
日本でいえば、「売り手よし、買い手よし、世間よし」の近江商人の考え方に通じるものがあります。
しかし、日本の証券会社はその当時、顧客からほとんど信頼されていなかった。
不祥事に次ぐ不祥事、そしてそれが収益の悪化をもたらし、無理な回転売買を顧客に強いることで、さらに信頼を失うという負のスパイラルを長らく続けてきたのが日本の証券会社だといえるでしょう。
最後に
ようやく日本にも、タリー・レポートの精神に沿った投資信託の販売が少しずつ根付いてきたようです。
今後、この文化が定着すれば日本の株価も離陸を始めるものと考えられます。
というか、そうなってくれ~。
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