カンバン方式。アメリカに徹底的に分析され日本の強みが消える

ベアリング

カンバン方式という言葉を聞いたことがある人は多いはず。

トヨタの生産方式で、在庫負担を減らして効率的な生産を行う方法であることくらいは知っていましたが、具体的な内容はよく知りませんでした。

ところでこのカンバン方式ですが、1980年代に、弱体化していたアメリカの企業がそのメリットを徹底的に分析し、日本人よりも理論的にその強みを把握することに成功しました。

さらに、カンバン方式にITを活用することによって、アメリカ産業は復活を遂げ、今日に至っています。そしてそれは今なお色あせていません。

そこでカンバン方式について中学生でもわかるくらいに簡単にまとめてみたわけです。






カンバン方式とは


カンバン方式とは、「必要なものを、必要なときに、必要な量だけつくる」ために簡単な板切れ(カンバン)を使い、上手に在庫を管理するトヨタ自動車が発明した生産方式です。

製造現場のムダを徹底的になくすことを目的としています。

具体的なムダとしては以下が挙げられます。

・作りすぎのムダ
・手持ぶさたのムダ
・運搬のムダ
・在庫過剰のムダ
・動作のムダ
・不良のムダ


カンバン方式の具体的手順


カンバン方式の原理は比較的単純です。

2種類のカンバンを使い、以下の手順で前工程と後工程の間の情報伝達と、部品の供給を行います。

1. 後工程は、部品が欲しくなったらと「引取りカンバン」を持って在庫置き場へ行く
2. 部品に付いている「生産指示カンバン」を外して、前工程へ送る
3. 持ってきた「引取りカンバン」を部品に張り付けて持ち帰る。
4. 前工程は、「生産指示カンバン」を受け取ったら、それを生産し部品に「生産指示カンバン」を張り付けて、在庫置き場へ補充する

「生産指示カンバン」を受け取った前工程は、決められた時間内に、在庫置き場へ供給しなければなりません。遅延すると在庫が欠品し、生産がストップしてしまいます。

最近は、物理的に板切れを運ぶ代わりにネットで情報を飛ばす「電子カンバン」も登場しています。

カンバン方式誕生のきっかけ


1960年頃、アメリカの自動車産業では、生産計画に基いて発注すべき部品の量と時期を決定するMRP方式が主流でした。

過去の使用分を補充するのではなく、予想される需要を事前に捉え、在庫の過剰と不足の両方を解消することを目指した方式です。

当時のMRPは、大型のコンピューターで計算されており、結果的には多くの在庫を持って運用されていました。

この生産方式を見学したトヨタ自動車の経営陣は、直観的に「これはうちでは無理だ」と感じたと言います。

大型のコンピュータやMRPのシステムが高額であるだけでなく、狭い日本の工場ではアメリカのように多くの在庫を抱えることができませんでした。

敗戦後の日本は資金や材料が乏しく、ムダなものを生産する余裕はなかったのです。

トヨタ自動車の一行は、見学の帰りに立ち寄ったスーパーマーケットで、カンバン方式のヒントを得たといいます。

スーパーマーケットの棚に陳列されている商品を、店員が見回り、棚に空きが出ていたら補充していたのです。スーパーマーケットの陳列方法を見て、これでいいのではないかということになりました。

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カンバン方式のメリット・デメリット


カンバン方式は、安価でシンプルにサプライチェーンを管理出来るところが、最大のメリットです。

計画を立てる必要も、実績を管理する必要もありません。それなのにMRP方式を使っていた工場よりも少ない在庫で上手に生産を回せるのだから、大きなアドバンテージです。

また、カンバン方式は現場の改善を促進するツールともなります。

在庫が少なければ現場には常に緊張感が生まれますし、欠品が起きないよう改善がどんどんはかられていきます。

その一方でデメリットもあります。

在庫の最少化を目的としているため、生産の大きな変動に弱いというデメリットです。

最後に


必要は発明の母とはまさにこのことでしょう。敗戦後で潤沢な資金も資材も無い中でいかに最大の生産を効率よく行うことができるか。

この命題を解決したのがカンバン方式です。

このカンバン方式もアメリカに徹底的に研究され、今ではむしろアメリカ企業で形を変えて活用されているというのはいささか寂しい限りです。

今度は徹底的にアメリカ企業の強み弱みを研究し、再び日本企業が世界に伍していく番だと期待します。

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