経済成長しなくなると少子化になるというもっともらしい嘘

少子高齢化が止まりません。
2020年の出生数はわずか84万人。1899年の調査開始以来、もっとも少ない人数となりました。
これは日本が経済成長しなくなったからだと考える人が多いだろうと思います。しかし、あるデータから、それはもっともらしい嘘であることは明らかなのです。
少子化は50年前から始まった
少子化は最近の出来事と思えばさにあらず。
以下は日本の出生数と出生率の推移です。

(出所:厚生労働省)
人口を維持するのに必要な出生率を2と考えれば、1970年代前半(昭和40年代後半)には出生率は2を切り始めており、日本の人口が減少していくことは今から50年も前に予想されていたことです。
そして、以下は日本の経済成長率の推移です。

(出所:社会実情データ図録)
確かに1970年代前半、経済成長は一気に落ち込みました。
これは第一次石油ショックによるものです。
その後、日本経済は立ち上がりバブル景気を迎えるわけですが、景気が高騰してもそれほど出生率が上昇することはありませんでした。
(参考)合計特殊出生率
合計特殊出生率は15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもので、一人の女性が一生の間に生むとしたときの子どもの数に相当する。
合計特殊出生率は15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもので、一人の女性が一生の間に生むとしたときの子どもの数に相当する。
興味深い数字
2013年から5年間、日銀副総裁を務めた経済学者の岩田規久男さんが興味深い分析をしています。
出生率と経済成長率を期間ごとに、そして国ごとに比較したのです。
その結果は以下のとおり。

(参考:「日本型格差社会」からの脱却」)
日本、韓国を見ると確かに経済が成長している時期は出生率が高く、低成長の時期は出生率が低い。
相関係数はほぼ1であり、限りなく正の相関関係にあります。
しかし、フランス、スウェーデンの同時期を見るとまったく違った光景が見えてきます。
フランスは低成長期にむしろ出生率が増えている。スウェーデンは成長率にかかわらず、高い出生率を維持しています。
日本、韓国とフランス、スウェーデンの違いは何なのでしょうか。
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フランスが取った政策
フランスの家族政策は1990年代以降、家族手当等の経済的支援から保育サービスの充実、出産・子育て世代の就業支援など、子育ての環境を整える政策に舵を切りました。
それが見事に身を結んだものと考えて間違いないでしょう。
スウェーデンについてはもともと高福祉国家であり、経済成長と出生率との関係が薄いと考えられます。
日本の出生率を上げる方法
フランスの例を見れば明らかなように、子育ての環境を手厚く整えれば、出生率を上げることができ、経済成長の上下の影響はほとんど無くすことができます。
これらを考えると日本の出生率を上げるには3つの方法しかありません。
高い経済成長を取り戻すか、子育て環境を徹底的に整備するか、その両方を達成するかです。
フランスにできて、日本にできない理由はどこにも見当たりません。
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