対面証券、高齢者の子との取引継続へ必死の対応。相続財産の取り込み図る

時計

Windows95が発売されて26年。インターネットは当初のダイアルアップ回線からは想像もできないほど安価かつ高速となりました。

そして、株式の売買委託手数料の自由化は1999年。

この2つは金融取引、とりわけ株式取引の有り様を劇的に変化させたのはご存じのとおりです。

それまでは電話でいちいち注文しなければならなかったのに、マウスとクリックで朝から夜中まで注文可能となったのですから。

しかも手数料は格安。投資家の食指が動かないわけがありません。






相続による先細りをなんとかせよ


もはや個人の株式取引の8割以上がインターネット経由で行われています。

70歳代のおじいちゃんでもネットでの取引は当たり前にように行われており、対面型の証券会社にとっては株式取引の仲介はもはやビジネスの対象ではなくなりつつあります。

そもそも対面証券のお得意様はもっぱら高齢者であり、先細りは目に見えています。

証券会社としては高齢者の子世代とも取引をしたい。それは将来の生き残りを左右する重大問題なのです。

そこで、やがて相続されるであろう資産をなんとか自社に残してもらうよう様々な新サービスを開始してきています。

人間誰しも歳を取るがそれは困る・・・


高齢となれば認知症になる人が増えてきます。

日本で認知症の高齢者は600万人以上と推計され、高齢者の2割程度が認知症になってしまうという計算です。

認知症になってしまった高齢者が保有する金融資産はなんと150兆円を超えると見られ、40歳未満の全世帯が保有する金融資産120兆円よりも多いというのですから驚きです。

しかし認知症になってしまえば、まともな意思表示ができないのですから証券取引など出来ようもない。

証券会社としては資産が寝かされるだけであり、収益を生まなくなるのですから頭を抱えてしまう大問題となります。

認知症になってしまった高齢者の株式を家族が売却しようとしても、本人の意思が確認できないから証券会社としても受けようがない。

なんとかするには成年後見人を立てるほかありませんが、そのハードルは高いのが実態。

手続きは難しく、時間もかかり、しかも家族が後見人に選ばれるとも限りません。被後見人の利益を損なう非行が横行しているからです。

最近では2割程度しか家族が後見人になっていないのが実情です。

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さまざまな対策(その1)


そこで証券会社は新たに様々なサービスを提供してきています。

代表的なのが「家族信託」という仕組みです。

高齢者が、自分が元気なうちに家族と財産管理を一任する契約を締結しておきます。

そして、信託口となる口座を開設し、管理を一任する金融商品を口座に移します。こうしておけば、高齢者が認知症になったとしても家族が金融商品の売買を行うことができるというわけです。

家族信託の契約締結は一般的に公正証書で行うため、多少費用がかかります。

さまざまな対策(その2)


三菱UFJモルガン・スタンレー証券は「予約型代理人」サービスというものを提供しています。

これはあらかじめ家族を代理人として届け出ておき、自分が元気なうちは自ら取引を行いますが、認知症になってしまったときは代理人が本人に代わって取引を行ったり、出金を行ったりできるというサービスです。

また、東海東京フィナンシャル・ホールディングスでは、「民事信託」という仕組みを導入しています。

高齢者が委託者となり、子に財産管理を託すといった仕組みです。

このままですと高齢者が元気なうちでも自分の判断で取引ができなくなってしまいますが、受託者(例えば子)が委託者に注文をする権利を認めることで民事信託契約後も高齢者は自らの判断で証券取引を継続できるという仕組みです。

認知症になってしまったときは受託者が委託者の権利をなくし、高齢者が自分で注文を出すことを停止することができます。

最後に


これらの仕組みは対面型証券に蓄積された高齢者の資産が相続によって散逸することを防ぐことが目的であることは明らかです。

なぜなら、高齢者の子との接点をあらかじめ持つことができるため、人間関係を開拓、維持することで相続財産をそのまま自社に残せる可能性が高まるからです。

来たるべき相続が発生してからでは遅いのです。

証券会社の知恵比べが続いています。

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