リート市場急拡大。しかしそれは苦渋の選択の結果

日本のリート市場が拡大を続けています。
しかし、それはJリート市場ではありません。地方銀行などが顧客から集めた預金を、機関投資家用に組成された私募リートファンドへ盛んに投資しています。
しかし、ファンドとなれば上場リートよりもコストも高くなるだろうし、いったいどんなメリットがあるのでしょうか。
余剰資金の運用難とその責任
コロナ騒動も一時に比べれば落ち着きを取り戻しつつあり、銀行のコロナ融資の伸びも2021年春以降、一服しました。

しかし、預金量の増加率は低下したものの相変わらず増加の一途を辿っています。

(出所:全国銀行協会)
その結果、金融機関の預貸率は低下する一方となっており、金融機関は貸し出しする先がなくて困り果てているという図式です。

(出所:中小企業庁)
経済は停滞し、企業や個人が守りに入っているため、新たな設備投資や消費は控えられ、景気は冷え込むばかり・・・。
そんな中、資源高による物価の上昇が起こり、不景気の中での物価上昇、いわゆるスタグフレーションが起こりつつあるというのが日本経済の現状です。
しかし、資源や生鮮食品を除いた物価は相変わらずの低調でデフレが継続しており、これはひとえに日本政府のケチケチ財政政策が原因であることは明らかです。
政府の金のバラマキが少なすぎて景気の好転にいたらない。アクセルの吹かしがまったく足りないと言わざるを得ません。
もはや財政破綻の嘘は一部識者の間では常識であるにもかかわらず、その事実は財務省にとって都合の悪い真実なのでしょう。
やむなく安値で叩き売り
銀行は資金の運用先に困り果てておりますが、低金利で収益を稼ぐ柱がない。
少しでも収益を確保しようとJリートへの投資を拡大していたわけですが、コロナショックで大いなる痛手を被りました。

東証リート指数は半値近くまで下落。
その売りの主役は地方銀行であったと推測されます。
なにしろ時価が取得価格よりも50%以上下落すれば減損処理をして、当期に損失処理をしなければなりません。
それを避けるために50%以上下落する前に損切りに走った結果が上記のチャートとなるわけです。
羹に懲りて膾を吹かない
銀行はJリートへの投資に失敗し、羹に懲りて膾を吹くかと思いきやそうでもなかったらしい。
なにしろ運用先が見つからないのに資金は入ってくる。これをなんとかしなければならないからです。
そこで流行り出したのが上場Jリートへの投資ではなく、機関投資家向けに作られた私募(※)のリートファンドです。
私募リートの資産規模はここ数年で2倍以上に膨れ上がっており、地方銀行や信用金庫などが主な投資主体です。
私募リートのメリットは取引所に上場していないため、時価が日々変わらないということ。上場していないだけに流動性は劣りますが、それをカバーするメリットがあるというわけです。
(※)私募
有価証券を発行する際、特定少数の投資家を対象に募集すること。通常、50人未満の投資家を対象する場合をいうが、銀行や保険会社などの適格機関投資家のみを対象にする場合は人数に関係なく私募として扱われる。
有価証券を発行する際、特定少数の投資家を対象に募集すること。通常、50人未満の投資家を対象する場合をいうが、銀行や保険会社などの適格機関投資家のみを対象にする場合は人数に関係なく私募として扱われる。
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市場価格などお構いなし
Jリートは取引所で取引されますので、ときの市場情勢により本来の不動産価値とは乖離した価格で取引される可能性があります。
しかし、私募リートは取引所で売買されないため、感情に任せたような価格がつくことはありません。
株が暴落すれば、Jリートもつられて売られるというようなことが起こるわけですが、私募ならば価格の評価はあくまでも不動産鑑定価格に基づいたものとなります。
当然、上場リートのように毎日評価額が変わるわけがなく、年に2回ほどというのが一般的です。
そのため、なにかしらの市場ショックによる下げ過ぎなどの影響を憂慮することなく、長期で安定的な収益が期待できるというわけ。
大暴落すれば売りたくなくても売らざるを得ないなどといった合理性に欠く投資行動をとらなくてもよくなります。
これはキャピタルゲインなどを当てにしていない銀行にとっては大いなる魅力だといえます。
最後に
これらは減損会計などを考慮しなくてよい個人投資家にはもともと無関係な話。
むしろ情緒的な大暴落などは個人投資家にとっては割安に優良銘柄を仕入れることができるチャンスだといえましょう。
そのためにも常に一定の買付余力を残しておくのは必須だと再認識させられるのであります。
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