骨抜き東証プライム市場。日本人の先送り体質か、それとも単なる見栄晴君か

東京証券取引所の市場再編が2022年4月に行われるのはご存じのとおり。
その目的は日本の最上位市場に位置づけられる東証1部が有名無実化していることにあります。
一度、東証1部に上場していまえば、上場廃止基準が緩いため、落ちぶれて時価総額が小さくなっても上場を維持し続けられる。
いわば味噌もクソも一緒になったごった煮市場と化しています。この状態を是正するための市場改革だったのですがどうやらその雲行きは怪しく、骨抜きの市場改革となりつつあります。
名ばかり最上位市場
現在、東証1部上場銘柄は約2180社あります。
対して、東証2部は約470社、ジャスダックは約700社、マザーズが約420社となっています。
もっとも価値があると見られる東証1部市場の数が圧倒的に多く、しかも本当に最上位市場に存在する価値があるか疑わしい企業も数多い。
この状態は、国際的に見ても異質であり、最上位市場の銘柄数はアメリカで1600社程度、イギリスは500社程度、ドイツは300社程度であることから日本の東証1部は名ばかり最上位市場となっていることがわかります。
(参考)市場再編のイメージ

市場再編もまた名ばかり
そこで考え出されたのが東証プライム市場という名の最上位市場です。
上場基準が東証1部よりも厳しくなり、まともに基準に当てはめれば現状の約2180社のうち、1000社近くが振り落とされると予想されていました。
しかし、ここからがいかにも日本的。
上場企業は2021年12月末までに今後上場を希望する市場を東証に申請することになっています。上場基準を満たしていなくても経過措置によって東証1部上場企業はプライムに残ることも可能なのです。
現状、約数百社が上場基準を満たさないものの、東証プライムへの残留を希望しているといいます。
プライム市場への上場企業は最終的に2000社近くとなる見込みであり、実質的に現在の東証1部とたいして変わらない。
これでは名称が変わっただけで中身は変わっていないといえるでしょう。
骨抜きとなった理由
いったいなぜこんなことになってしまったのか?
理由は2つ考えられます。
大きな理由として、経過措置がいったいいつまで続くのか明確になっていない点が挙げられます。
上場基準を満たしていなくても、改善計画書を提出することでプライムに移行することができる。
しかも経過措置の期限が示されていないため、計画の期限が企業によってバラバラとなっており、10年近い計画を検討している企業もあります。
期限が決まっていないのだから、とりあえず計画書を出してプライムに移行しようという企業が相当程度存在すると考えられます。
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企業の反発を招いた原因
2つめの要因は感情的な反発です。
今回の市場再編は上場企業には寝耳に水の話であり、相当な反発を生みました。
その反発をなだめるために、期限もはっきりしない経過措置が設けられたのは想像に難くない。
基準を満たせそうもない企業は意趣返しとして意地でもプライム市場に移行してやろうという感情的な反動に駆られるのも理解できます。
なぜそんな反発を招いたのかは以下の記事をご覧ください。
(関連記事)東証の新たな市場再編案。TOPIXの算出方法が大幅に変わるかも・・・
最後に
企業からの申請を受けて東証は2022年1月11日に各企業の上場市場を公表する予定です。
プライム市場の上場基準を満たしている企業でもあえてスタンダードを選ぶ企業もあり、その動向が注目されます。
それにしても今回の市場改革。市場の名称が変わっただけで、まったくの骨抜きとなった感を否めず、早くも基準の引き上げ論が出てくるなど迷走が続いています。
投資家としてはまったく意味のない、名ばかり市場再編にとどまってしまったと考えざるを得ません。
【関連記事】
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