旧ソ連の崩壊が西側社会の格差を極大化させたという説

ソ連

青山学院大学大学院の福井義高教授がアメリカの格差社会の進展について興味深い見方を開陳しておりました。

初めて聞く考え方であり、新鮮であるととともに、説得力のある説だったのです。






アメリカの格差社会


アメリカの昨今の所得格差、資産格差は著しい。

上位1%の富裕層が4割の資産を保有するほどであり、政治を動かしているのはさらにそのアッパー層である上位0.1%層であるといいます。

税制は超富裕層にとって都合のよいように改正され、中途半端な金持ちよりも超スーパー富裕層の方が税率が低いなどという、わけのわからない制度がまかり通っているのがアメリカです。

格差社会がアメリカの伝統ではない


しかし、アメリカが昔からそうだったのかといわれればそんなことはありません。

1970年代まではアメリカの社長の報酬は一般社員の20倍程度であり、今の日本とそんなに大差はありませんでした。

ところが1980年代の後半から急激に一般社員と経営層の所得格差が広がり始めたのです。

以下は上位1%の所得が占めるシェアを時系列に表しています。

20210104kakusa.jpg
(出所:内閣府)

ちなみに日本はアメリカほど格差が拡大していないのが救いですが、デフレのせいで全体的に貧困化しているという別の問題があります。

20210104kakusa2.jpg
(出所:内閣府)

アメリカで格差が広がった一要因


ではいったいなぜ1980年代後半から急激な格差拡大が起こり始めたのでしょうか。

福井教授によればソ連の崩壊が密接に関係しているのではないかというのです。ただ単に東側の労働人口が西側に流れ込んできただけという見方ではないのが面白い。

冷戦中、ソ連はアメリカに対抗する大国でしたがアメリカとは社会体制がまったく異なる社会主義国だったのはご存じのとおりです。

そして社会主義は建前ではありますが、格差のない平等主義ということになっています。

もし、アメリカ社会が不満を鬱積させるような極端な格差社会になれば、社会主義にシンパシーを感じる人が出てくるに違いありません。

アメリカとしては国家の社会主義化を避けるために極端な不平等は避けつつ豊かな社会を目指したものと考えられます。

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ライバル没落でタガ外れる


ところが、ソ連の崩壊でアメリカ社会のタガは外れました。

もはや社会主義は民主主義に完全に敗北し、対抗軸がなくなったのですから遠慮なく格差を広げることができる。

また、ソ連をはじめとした東欧諸国の民主化で安い労働力が西側社会に流れ込んできたことも一要因ではあるでしょう。

富裕な経営層は安い労働力を使って利益を極大化する。

そして、今まで働いていた一般の社員は新たな安い労働力と低賃金競争を強いられることになり給料が伸びない。

その結果、経営者と一般社員との所得格差はますます広がったものと考えられます。

中国も社会主義国家だが・・・


さて、今は米中新冷戦の時代へ突入しました。

そして、中国はソ連と同じく社会主義国家です。しかし、中国はソ連とは趣が違い、社会資本主義ともいえる格差社会です。

いわばアメリカ型の格差社会が社会主義国で実現しており、アメリカとしては格差拡大を気に留める必要もない。

それゆえ中国がいくら巨大化してもアメリカの格差社会は是正されないというのが現在の状況ではないでしょうか。

最後に


ソ連と違い、中国がいくら発展しても社会主義へのシンパシーを感じる人は少ないと考えます。

格差がひどいうえに、言論の自由もない。

それだったら格差があっても言論の自由がある西側社会を選ぶのがまともな人間だと思います。

世界が中国化することはないとは思いますが、西側民主主義国家にも言論の自由がなくなりつつあるのは最近の大いなる懸念材料です。

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