2020年、休廃業は過去最高。その原因は日本人の見えざる冷酷性

2021年、コロナ禍においても上場企業の倒産件数はなんとゼロ件。
あくまで上場企業に限った話ですが2020年も2件にとどまっており、倒産件数は思っていたほど増えていません。
しかし、それで政府の経済運営がうまく行っているなどと考えるのはとんでもない誤りです。
東京商工リサーチの調査によれば、2020年の休廃業件数は約5万件にのぼり、2000年の調査開始以降、最高を記録しました。
倒産する前に廃業してしまおうという流れが加速したわけです。これは財政均衡至上主義を掲げる政府(財務省)の意向に沿った人でなし政策による結果であることに間違いありません。
休業補償のあるべき姿
なぜこんなにも廃業が多くなってしまったのか?
政府は世界各国に劣らぬ規模の財政支出を行った(行うように見せかけたといえるが)にもかかわらずです。
大きな要因として「休業補償」のあり方に大きな問題があります。
異常な緊急事態の中で、飲食店や宿泊業を中心に客数が異様なまでに減ったのはご存じのとおりです。
しかし、客が来なくても固定費はかかる。経営者が資金繰りの確保で頭を抱えたことは想像に難くありません。
欧米各国ではこのような飲食店などに対し、とりあえず数百万円規模の休業補償をつかみ金でポンと出しました。
とにかくスピード重視。一件一件精査などしていたら、時間がかかって他の事業者が窒息死してしまいます。
このようなお金の出し方を「概算払い」といい、危機が去った後に精査なりを行うという方式です。
心肺機能が止まりそうなのだから、あれこれ考えてないで人口呼吸をし、死なないようにするのと同じであり、人間ならば当たり前の行動でしょう。
冷酷非情の日本のシステム
ところが日本ではこの当たり前が行われない。
日本では緊急事態にもかかわらず平時同様、ありとあらゆる資料を作成、提出させてそれらを精査し、ようやく支払いがなされるという「精算払い」という方式が取られました。
飲食店を経営している人は書類作成には慣れていない人も多いし、やり方も難しい。
そんなことをしている間にも家賃は払わなくてはならないしで、資金繰りに行き詰まる。そして、夜逃げすることになる前に店をたたもうと考えた人が多かったということです。
日本人は優しいとか、思いやりがあるとか言われることが多いのですが、個人的にはそれは嘘だと思います。
単に弱いだけであり、弱さと優しさが混同されているだけのように見えます。
優しさの根底には強さがなくてはどうしようもありませんが、今の政治家や官僚には強さがないがゆえに優しさはありません。あるのは保身だけです。
冷酷非情の根底にあるもの
このようなケチケチな政策がとられるのは財務省が主導する財政均衡主義に基づいた緊縮財政が根っこにあるのは明らかです。
彼らは景気が悪くなってもクビになることはないし、民間が苦しくなれば自分たちが相対的に裕福になるのですから庶民が苦しもうが何の関係もない。
一人ひとりは悪気がないとしても、不作為の罪が問われるというものです。
そして彼らは自分たちを正当化するためにマスメディアを利用していることはよく知られているところです。
その見返りに新聞には消費税率の軽減税率8%が与えられたのは明らかです。
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マスメディアの罪
2022年1月10日、日本経済新聞の「日本株、買われない「真相」」というコラムでトンデモ論が展開されておりました。
慶応大学のS教授が以下のようなコメントをさも正しいかの如く報道しています。
(以下引用)
「日本経済の低迷の原因は国債の大量発行にある。景気対策で目先の国内総生産(GDP)は増えても、その資金を国債で賄う限り、政府の資金需要が民間経済を押しのける『クラウディングアウト』が発生し、名目金利から期待物価上昇率の影響を除いた実質金利を押し上げるためだ。」
「日本経済の低迷の原因は国債の大量発行にある。景気対策で目先の国内総生産(GDP)は増えても、その資金を国債で賄う限り、政府の資金需要が民間経済を押しのける『クラウディングアウト』が発生し、名目金利から期待物価上昇率の影響を除いた実質金利を押し上げるためだ。」
クラウディング・アウトは、政府の資金需要の増加が利子率の上昇を発生させることにより民間部門の資金需要を抑制し、民間投資を減少させてしまう現象のことをいいます。
では本当にクラウディング・アウトが発生しているのか?
以下は政府債務の残高推移です。

(世界経済のネタ帳)
右肩上がりで国債発行が増えているのがわかります。にもかかわらず、実質金利は下げ止まったままです。

(出所:日本銀行)
バブル崩壊後、名目金利のみならず、実質金利も超低金利が常態化しており、S教授の論理は前提条件からして間違っています。
民間投資が増加していないのは、単にデフレで需要が少ないからです。
日本経済が1990年代以降、今だ低迷しているのは国債発行がまだまだ少ない上に、デフレを加速させる消費増税を繰り返したことが原因です。
S教授の言っていることはあまりに短絡的と言わざるを得ません。御用学者といわれても仕方がなかろうと思います。
嘘が堂々と喧伝され洗脳に使われる
日本経済新聞は最後に、「長期的な株高持続の条件は一にも二にも財政再建と日銀の異次元金融緩和撤退ということになる。」と締めくくっています。
ナチス・ドイツの宣伝大臣であったゲッベルスは嘘も百回言えば真実となると言ったといいます。
最近、財政破綻論の嘘がばれたことから、国債発行により財政破綻するなどという愚論を述べる人はほとんどいなくなりました。
しかしそれは財務省にとって不都合な真実です。
そこで最近展開されているのが、ハイパーインフレになるという論理です。
そして今回、株価が上がらないという新たな説を持ち出し、投資家を洗脳して圧力をかけさせようとしているのは明々白々です。
優秀な人間ですら誤りを犯す
人間誰しも間違うものです。それはどんなに優秀な人でも同じなのでしょう。あの竹中平蔵氏でさえも2003年当時、著書で以下のように述べておりました。
「金利を払う前の段階で財政収支が赤字になっていると(つまりプライマリーバランスが赤字のままですと、GDPに対する国債残高の比率もどんどん高くなり、それが続けば、財政は完全に破綻する懸念が高まるのです。」
今となっては赤面ものの間違いですが、今は考えを改められたようです。
家計や企業会計的には正しいのでもっともらしく聞こえますが、自国通貨を発行できる変動相場制の国ではまったく当てはまらないということに当時の竹中氏は気が付かなかったのでしょう。
それはやむを得ない、人間だもの。
最後に
とにかく財政均衡至上主義が国民にもたらすものは貧困にほかならない。
バブル崩壊の痛手は大きく、その後の政策を誤ったためにデフレに陥り、今だその傷は癒えていない。
日経新聞のプロパガンダなどを信じていたら日本の復活はさらに遠のく(あるいは不可能)となるだけです。
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