少子化により潜在成長率が低くなるという思い込みと嘘

チャート

少子化が進めば経済の潜在成長率が低くなると言われれば、ほとんどの人は納得するのではないでしょうか。

働く人が少なくなれば経済の規模も小さくなるというごくごく自然な考え方です(間違っていますが)。

潜在成長率とはいったい何なのか。その概念をまずは正確にとらえる必要がありそうです。






潜在成長率と聞けば・・・


潜在成長率と言われれば、ほとんどの人はフルパワーで活動したときにどれだけ成長できるのかを表した数値であると考えるのではないでしょうか。

ところが現在、政府が発表する潜在成長率はまったく概念が異なるものです。

「潜在」という言葉とはかけ離れた異質なものといってもよい。

なんと政府が発表する潜在成長率は過去の経済成長率の平均を表しているにすぎないのですから。

デフレでGDPが低成長率に陥れば、必然的に潜在成長率も低くなるという奇妙奇天烈な計算方法で算出されているのが現在の潜在成長率なのです。

言葉のイメージとは違いすぎる概念


言葉と実質の乖離が著しい。ミスリードを生んでいるのは明らかです。

潜在成長率と聞けば、持てる生産能力をフル稼働した際にどれだけ成長できるかを表していると考えるのが普通ではないでしょうか。

これを最大概念の潜在成長率というのですが、日本政府が採用しているのは平均概念の潜在成長率といわれるものです。

潜在成長率という言葉はふさわしくない。

過去の平均成長率と正確に言い換えるべきでしょう。

潜在成長率の推移


日本銀行が潜在成長率の概念を変えたのは2000年代半ばです。

その結果、何が起きたかといえば当然、潜在成長率の低下です。

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(出所:日本銀行)

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平均概念では悪循環が連鎖する


これは大いなる問題をはらんでいます。

多くの経営者は潜在成長率が低い国に投資をしようとは思わないでしょう。

当然、設備投資は減少し、ますます経済規模は小さくなる。いわば悪循環の再生産です。

以下は主要国の経済成長の推移です。

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(出所:社会実情データ図録)

1990年代以降の日本の低成長が目に余る。

バブル崩壊とその対応の失敗によりデフレがますます加速する中、平均概念の潜在成長率などを採用したらどうなるかわかりそうなものです。

最後に


潜在成長率という言葉に騙されてはならない。単に過去の結果を示しているだけであり、潜在能力を表しているわけではないのです。

今まで勉強していなくて、テストの点数が低かった人は見方を変えれば潜在的な成長余力が大きいと考えるのが普通でしょう。猛勉強すれば急成長する可能性があります。

しかし、平均概念などで考えたら、過去にテストの点数が低かった人は今後いくら頑張っても成長余力は小さいというおかしな結論になります。

ただちに潜在成長率の概念を変更するか、言葉を変えるべきだといえます。

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