日本の投資家は分配好み!?貧すれば鈍する投資感覚

興味深い数字があります。
投資信託の資産から分配金に回される比率が日本では6%以上に達するのに対し、アメリカでは4%程度となっています。
さらに特徴的なのは分配された金額を再投資している比率が日米では5倍以上差があるというのです。もちろん再投資比率が高いのはアメリカです。
いったいどんな要因が背景にあるのでしょうか。
税制の違いによる要因
日本では個々の投資家ごとに投資信託の買付金額を「個別元本(※)」という数値で把握し、時価が個別元本を下回っている(評価損)状態で分配金が支払われた場合には、投資元本の払い戻しとみなし(元本払戻金という)、課税はなされません。
アメリカでもファンドによっては分配金が払い出されるわけですが、買付コストは考慮されず、受け取った分配金の全額をその年の所得として納税する必要があります。
つまり、評価損が発生していても分配金が支払われれば所得とみなされて税金をとられるということです。
日本は敗者にやさしく、アメリカは厳しいといえます。
このような税制のもとではアメリカの投資家が分配を避けるのは当然のことといえ、これが日米の差となって表れているものと考えられます。
(※)個別元本
投資信託の計算上の買い値。追加型の投資信託では購入日により個別元本が異なる。投資信託を換金した場合は、換金時の基準価額と個別元本の差額が収益とみなされ課税される。投資信託から分配金を受けとった場合は基準価額が個別元本を上回っている場合は、普通分配金として課税され、個別元本を下回っている場合は、下回った部分が元本の払い戻しとして非課税となり、残りの額が普通分配金として課税される。
投資信託の計算上の買い値。追加型の投資信託では購入日により個別元本が異なる。投資信託を換金した場合は、換金時の基準価額と個別元本の差額が収益とみなされ課税される。投資信託から分配金を受けとった場合は基準価額が個別元本を上回っている場合は、普通分配金として課税され、個別元本を下回っている場合は、下回った部分が元本の払い戻しとして非課税となり、残りの額が普通分配金として課税される。
高齢化社会の進展による要因
日本が世界一の高齢化社会であることはご存じのとおり。
そして、年金だけでは汲々として生活が苦しい高齢者にとっては、分配金が毎月支払われる投資信託はありがたいというわけです。
以下は主要国の高齢化率です。

(出所:社会実情データ図録)
現状、日本は図抜けています。アメリカも高齢化が進んでいるとはいえ、日本とは比べものにならない。
日本の高齢化社会は2050年にようやく落ち着くといったところです。
デフレによる低経済成長による要因
日本で生活が苦しいのは高齢者ばかりではございません。
デフレにより経済成長はなくなり、賃金は上がるどころか下がるばかり。さらに非正規雇用の比率が高まり日本人の貧困化が進んでいます。
それは生活保護を受けている世帯数の推移を見ればよくわかります。

(出所:社会実情データ図録)
デフレ元年といわれる1997年から見事なまでの右肩上がり。ようやく第二次安倍政権で歯止めがかかったといった状態です。
しかし、好転の兆しは今だ見えません。
そこで目先の金に釣られるがごとく、毎月分配型の投資信託に群がったのが日本の投資家というわけです。
まさに貧すれば鈍するということです。
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日本の低金利が長期化したことによる要因
高度成長期やバブル期には貯金をしていればそれなりに金利がもらえたものです。
郵便貯金で10年預ければ倍になる時代もあったのです。今では信じられませんが。
以下は日本の長期金利の推移です。

(出所:ニッポンの数字)
そんな中、海外の高い金利が魅力的に映るのは致し方ありません。
そして、高い金利の魅力をアピールするのに使われたのが毎月分配型の投資信託といってよい。
なんと毎月分配できるんですよ~ってな感じです。
最後に
日本人が分配型の投資信託を好んだのは環境の変化によるものというのが個人的見解です。
合理的に考えれば不利なことでも、苦境に陥れば受け入れざるを得ない。人間は貧しくなればなるほど非合理的な行動に走るとしか考えられません。
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