外貨建て保険は仕組債と同様でブラックボックス化した怪しい金融商品という印象

ここ数年、外貨建て保険に関する苦情が右肩上がりとなっており、そのために新たな資格試験までもが導入されたことは、金融業界に興味がある人であればご存じのことと思います。
2022年4月からその資格制度がいよいよ導入されるわけですが、それと合わせたように外貨建て保険のコスト構造が見直されるといいます。
それは今までがボッタくり商法であったことを明らかにしてくれるものでもあります。
外貨建て保険の苦情が増加中
以下は消費生活センターなどに寄せられた外貨建て保険の相談件数の推移です。

(出所:国民生活センター)
明らかな右肩上がり傾向を示しています。
もっとも、販売件数が増加しているので、比率はそれほど上がっていない点は考慮しておかねばなりません。
それにしても高齢者の比率が高い。やはり高齢者は金融機関のカモにされているケースが多いのではないかと考えざるを得ません。
なぜこんなに外貨建て保険が売れるのかといえば、日本の金利が低いからにほかならない。
しかし、いくら外貨は金利が高いとはいえ、為替変動リスクや債券の価格変動リスクを十分に理解したうえで高齢者が保険を購入しているかはいささか疑わしいと思わざるをえません。
タイムラグマージン?何それ
ところで、外貨建て保険販売の業界トップである保険会社が取扱い商品の手数料を見直すといいます。
具体的には中途解約した際の「タイムラグマージン」といわれる手数料を廃止するということです。
ではタイムラグマージンとはいったい何なのか?
外貨建て保険の場合、契約者から解約の申し出があった際、実際の解約の手続きが終わるまでに若干の日数がかかります。
その間に金利が上昇して債券価格が下落するというリスクを契約者に負ってもらうために0.3%程度の手数料を設定しているのです。
金額が大きいだけに%が低くても馬鹿にできない
たかが0.3%というなかれ。
保険料が1000万円程度で5年程度経過してから解約すると現状では20万円近くが手数料として取られると試算されます。
かかる手数料はそれだけではありません。
契約後に比較的短い期間で解約すると解約控除などといってさらに大きな手数料がかかります。
ふざけているのは、タイムラグマージンをもらって、相場が逆に動き保険会社に利益が発生したとしても契約者には何の恩恵もないことです。
これがボッタクリ商法といわずして何というのかという話です。
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金融当局も問題視
さすがに金融当局も黙っているわけにはいかなくなり、2021年8月に金融庁が金融機関を監督する際の拠り所とする監督指針を改正し、厳しい姿勢を見せました。
これにより保険会社各社が路線変更をしたというわけです。
逆にいえば、金融当局が何もしなければそのまま放置されていたことはまず間違いなく、保険会社は消費者の無知に付け込んで、いかがわしい商売をしているとしか思えない。
まったく由々しき問題なのであります。
最後に
外貨建て保険は仕組債とよく似た性格を持つ商品であると思います。
それが何かといわれれば、商品の構造がブラックボックス化しており、素人にはいくら金融機関が利益を抜いているのかよくわからないという点です。
これがジュースやパンなら理解できる。
そもそも安いし、他の店とも比べやすい。しかし保険商品は高額であり、容易に他の商品と比較することができません。
金融機関が外貨建て保険や仕組債を勧めてきたときは、よほど金融商品に詳しい人以外はお断りするのが賢明であるというのが個人的見解です。
複雑な金融商品にろくなものはないというのが世の常だといってよいでしょう。
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