日本の投資信託市場のガラパゴス。トータルリターン通知制度

最近、投資信託への投資を始めた方は、トータルリターン通知制度があるのが当たり前だと思っているかもしれません。
しかしこの制度、2014年に始まったものであり、まだまだ歴史は浅いものです。
そしてこの制度、一見すばらしい制度に思えるのですが、投資家の無知に付け込んだ販売会社から投資家を守るためにできたといってよい。
そこには金融リテラシーに欠ける日本の投資家の姿が浮かび上がるのです。
トータルリターン通知制度というガラパゴス
投資信託の販売会社は少なくとも年に1回、顧客にファンドごとのトータルリターンを通知する義務があります。
これまた欧米の猿真似かと思いきや、そんなことはない。
意外にもトータルリターン通知制度は欧米には見られない、日本独特の制度なのです。
トータルリターン。その計算方法
このトータルリターン通知制度。具体的な計算方法を知っている人は案外少ないのではないでしょうか。
計算式はごくごく単純です。
「トータルリターン」=「時価評価額」+「受取分配金累計額」+「解約累計額」-「買付累計額」
となります。率ではなく、金額で表されるのが特徴です。
パーセンテージで表すよりも金額で表したほうがより実感がわくという考え方だろうと思います。とにかくシンプルイズベスト。わかりやすいのが一番ですから。
やたら売れまくった毎月分配型投信
しかし、なぜこのトータルリターン通知制度が導入されたのでしょうか。
それはひとえに「毎月分配型」の投資信託が非合理に売れまくっていたからだと考えて間違いありません。
以下は2014年前後の分配頻度ごとの投資信託の残高比率の推移です。

(出所:金融庁)
なんと毎月分配型が7割を占めるという異常さです。
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高齢者からの苦情増大とその後
分配金の原資が何であるか、分配がなされればその分純資産が減少して基準価額が下がること、などをきちんと理解して投資していた人は少ないはずです。
その証拠に国民生活センターに寄せられた相談は年々多くなっていました。

(出所:国民生活センター)
とりわけその犠牲になったのは高齢者です。相談事案の半分は高齢者からなされていたのです。

(出所:国民生活センター)
当局からの厳しい視線と意識して投信販売会社や運用会社の姿勢が変わったことは新規設定されたファンドのうち、毎月分配型が占める比率がその後、極端に減少したことからも明らかです。

(出所:金融庁)
最後に
とかく金融機関は売れる商品を作り出すことに熱心であり、それが本当に顧客の利益になるかについての関心は薄いといってよい。
最近は多少改善されてきたとはいえ、その本質が変わったとはとても思えないのであります。となれば個々人が金融リテラシーを高めて自己防衛に走るほかありません。
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