IPOで大儲けはもう無理。IPO宝くじ抽選会の終焉

IPO(株式新規公開)の公開価格の値決めに関し、2021年12月に公正取引委員会が問題提起をしたことを受け、日本証券業協会が動き出しています。
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今年(2022年)2月末、旧来の慣行を大きく変える方向で報告書が公表されました。
IPOの公募株式申込の抽選に当たればまず儲かるという従来の常識が変わることになりそうです。
報告書の内容は日本証券業協会のウェブサイトで見ることができます。19項目にわたり見直しがなされているわけですが、ここではその内容の重要ポイントをまとめておきます。
仮条件に縛られない
現状、公開価格の決定はファンダメンタルズ、同業他社との比較、機関投資家へのヒアリングを通じて仮条件価格が決定され、投資家によるブックビルディングは仮条件の範囲内で行われます。
公開価格が仮条件に縛られる根拠法令等はありませんが、仮条件の範囲外であった前例はありません。
この慣行に対し、3つの改善策が提示されています。
・仮条件の範囲を拡大する
・仮条件の範囲外での指値申告を可能とする
・仮条件の範囲外での公開価格の設定を可能とする
これは市場の動静が逐一変わることへ対応、硬直的な公開価格の決定を防ぐという意味を持つと考えられます。
有価証券届出書の記載見直し
非上場会社が上場する際には有価証券届出書を当局へ提出するわけですが、現状、有価証券届出書に想定発行価格が記載されています。
想定発行価格が記載されることにより先入観を与えるおそれがあることから、価格を開示しない選択をすることを可能とするよう改善策が示されています。
主幹事証券会社間の比較を可能とする
現状、主幹事証券会社別の公開価格や上場後の株価等について比較可能な形での公表はされていません。
今後は、日本証券業協会が発行会社名、上場日、主幹事証券会社、仮条件、公開価格、上場日初値、公開価格と上場日初値との乖離率、上場日から一定期間経過後の株価などをウェブサイト上で公表するという改善がなされる予定です。
これにより主幹事証券会社間の比較が容易になり、より適切な対応をしているであろう証券会社が把握できますので非常に好ましいといえます。
新規上場を目指す会社にとっては主幹事証券会社をどこにするかの基準となりますし、投資家としてはその銘柄に投資するかどうかの判断材料になるということです。
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公開会社へ需要情報等提供者を実名で提供
現状、主幹事証券会社は発行会社に対して機関投資家へのヒアリング内容に関し、内容提供する規則がないところ、改善策においては機関投資家の同意を得たうえで実名により発行会社に対して提供することになっていきます。
今のところは実名を明らかにしていないのであるから、情報の内容など虚偽であろうが、ある種どうにでもなる。聞かされたほうも本当かどうか疑心暗鬼になるでしょう。
その点、実名を出してくれれば納得感が高まるというものです。
公開価格の妥当性に対して納得できる説明を
一部の新規上場会社においては公開価格等の算定根拠や主幹事証券会社の引受割合について納得感がないという意見もありました。
そこで今後は、主幹事証券会社が想定発行価格、仮条件や公開価格の提案に際して、その算定根拠を発行会
社へ説明することを規則化するよう改善策が示されています。
主幹事証券会社を追加・変更!?
一部の新規上場会社において、主幹事証券会社が設定した公開価格に不満があってもその力関係から主幹事証券会社を変更しにくいのではないかとの意見がありました。
また、共同主幹事証券会社が加わることや、主幹事証券会社以外の証券会社からセカンドオピニオンを得ることで客観的な視点から価格の妥当性を検討することなどが可能になるのではないかとの意見がありました。
主幹事証券会社は、合理的な理由なく主幹事証券会社の追加・変更、セカンドオピニオンの聴取を妨害せず、発行会社が希望する場合には、関係資料を提供し主幹事証券会社の追加また変更の可能性にも配慮するよう改善する方針です。
公正取引委員会が指摘しているのはまさに優越的地位の濫用です。その濫用を防ぐには、いつでも第二、第三の選択肢が開かれていることが重要であることはいうまでもありません。
最後に
今回の改善策はIPOマニアにはつらいのかもしれませんが、一般論でいえば理にかなったものといえるでしょう。
これらの改正は2022年6月以降、順次実施されていく予定となっています。
2022年夏以降はIPOの値付けが、より市場の評価を反映したものとなることは間違いない。
これはIPOの抽選に当たれば宝くじに当たったようなもので、儲けは確実という従来の常識が終焉を迎えることを意味します。
今後はIPO銘柄が持つ本来のファンダメンタルズをより慎重に調べる必要がありそうです。
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