アベノミクスの失敗はIS-LM分析で簡単に理解できる。そして今後やるべきことも

札束

アベノミクスが失敗したかどうかは意見が分かれるところでしょう。失業率は低下し、株価も上昇したという点では一定の効果を出したとはいえます。

しかしその間、国民の所得は減少を続け、当初のインフレターゲット2%にも届かなかったという点では成功とは程遠く、多少マシになった程度です。

求められていた期待を裏切ったという点を加味して考えれば失敗だったというのが多少厳しい個人的な見解であります。

しかし、なぜこんな結果に終わってしまったのか。それはマクロ経済学でよく使われるIS‐LM分析で簡単に理解できるのです。






IS曲線、LM曲線とは


横軸にGDP、縦軸に利子率をとったとき、IS曲線は投資と貯蓄の関係から利子率の動きを示しています。

また、LM曲線は通貨の需要と供給を通じた利子率の動きを表します。

利子率が下がれば貯蓄が減り投資が増えるため、IS曲線は右肩下がりの曲線となります。

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また、利子率が上がれば通貨の人気が高まり需要が高まるため、LM曲線は右肩上がりの曲線となります。

20220316LM.jpg

そして、IS曲線とLM曲線との交点がGDPということになります。

20220317ISLM.jpg

アベノミクス当初


第二次安倍政権がスタートしたのは2012年末。アベノミクス3本の矢などといわれ、第1の矢が金融緩和、第2の矢が財政拡大、第3の矢が成長戦略であったと記憶しています。

事実、2013年はわずかながらではありますが、財政は拡大しました。

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(出所:内閣府)

また黒田日銀総裁が発足したのが2013年4月。黒田バズーカといわれる異次元金融緩和により、金利は一気に低下し、マネタリーベースが急激に伸びました。

20220316money.jpg
(出所:日本銀行)

滑り出しは順調だったのだが・・・


これにより何が起こったか。

財政拡大により利子率の上昇圧力が生じるわけですが(青ライン)、異次元金融緩和により、利子率の下降圧力も生じます(赤ライン)。

20220316ISLM.jpg

その結果IS曲線とLM曲線の交点は右に移動し、GDPの増加圧力が発生します。要するに国民が豊かになるということです。

アベノミクスは当初本当にうまくいったのです。

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腰砕けのバックブリーカー


しかし、何をとち狂ったか、安倍首相はその後公共事業を絞り出したのです。第2の矢は急激にスピードをなくし、地面に落下しました。

日銀は相変わらず異次元緩和を続けていたにもかかわらず、財政緊縮に走ったため、IS曲線は再び下向きに下降してしまい、均衡GDPに減少圧力が加わったのです。

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公共事業を減らしたうえに2度の消費増税で均衡GDPに完全なる低下圧力をかけました。

安倍首相が経済通などと言う人がいますがそれは嘘です。

もし、本当だとしたらさらに罪深い。経済が沈没することをわかって政権運営していたことになるのですから。

最後に


こうして考えると黒田日銀がいかに立派であったかがわかる。孤軍奮闘でなんとか日本経済を支えたといってよい。

その黒田さんもあと1年の任期だと思うと、日本経済の今後を憂うばかりなのです。

日本のGDPを増やすには大規模金融緩和と大規模公共投資を同時に行うほかありません。こんなことはマクロ経済学の入門書を読めばすぐに理解できることなのですが・・・。

財政破綻論者やハイパーインフレ論者というアホがその足を引っ張るのであります。

そういったアホがテレビでアホ丸出しの発言を恥も外聞も、そして知性のかけらもなくコメントするのにはもはやうんざりです。

そしてそのアホ発言の受け売りをするデラックスアホには開いた口がふさがらないというところなのです。

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