大規模増税ができないならステルス増税だ。財務省の巧妙さ

コロナ禍ではさすがに大規模増税は難しい。財務省もその辺は重々承知です。
世間の波に逆らってまで増税路線を突っ走ることは日本中を敵に回すことになるし、政治家も首を縦にはふらないでしょう。
しかたがないというわけで、細々とした税制改正で糊口をしのぐがごとく、税収アップを目指しているようなのです。
相続時精算課税なるもの
相続時精算課税という制度があります。
60歳以上の父母や祖父母から成人の子や孫への贈与額の合計が2500万円以内なら何度贈与しても贈与税がかからないという制度です。
ちなみに2500万円を超えた場合でも20%の一律課税で済み、暦年贈与の税率とは天地ほどの違いがあります。
以下は贈与税の税率となります。

(出所:国税庁)
贈与された資産については実際に相続が発生したときに贈与したときの資産価値で相続税が課税されることとなります。
多額の資産を贈与された人は、実際の課税が相続時に繰り延べられるため、税負担を先延ばしにできます。その間に資産が値上がりしても贈与されたときの資産価値で済みますから、値上がりが期待できる資産であればメリットが大きくなる。
相続時精算課税制度を利用して贈与した株式が大化けしたときなどは資産価値を小さく見積もることができるので大いにメリットを享受することができるというわけです。
そもそも相続税が発生しない程度の人であれば、相続時精算課税制度を使って一気に贈与した場合、贈与税もかからず、相続税も発生しないというメリットもあります。
使われない相続時精算課税制度
しかし、この相続時精算課税、知名度に欠けるのとそのややこしさから利用は低迷しているというのが実態です。
ところがここに来て(2022年春)、にわかに注目を集めています。
なぜなら、政府(財務省および国税庁)は、贈与を利用して相続税の節税を図ろうとする富裕層の相続対策に網をかけようとしているからです。
具体的にどのような制度改正が考えられているのでしょうか。
大幅な改正案としては暦年贈与の際の贈与税を廃止し、相続時精算課税制度へ一本化するという案があります。
しかし、これはいささか過激であり否定的な意見が多いようです。
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現実的改正案
現実的な案として考えられているのは、相続時精算課税制度の非課税枠を拡充する一方で、暦年課税の非課税枠を縮小させるという案です。
相続時精算課税制度の非課税枠を2500万円から3000万円に拡充する一方、暦年課税の非課税枠を110万円から60万円に縮小するなどといった具合です。
また、現行制度では相続発生前3年間に贈与があった場合は相続財産に組み入れなければならないところ、その期間を5年や10年などに長期化することも検討されているようです。
これにより、相続税による税収が増えるっていうことなのです。
最後に
贈与税は実際のところとりっぱぐれが多いのではないでしょうか。
現金で手渡しすれば実際のところ税務当局は把握が難しい。そして贈与はいつされるのかも予測不能です。
その点、相続税に一本化すれば確実に把握ができるうえ、調査も綿密にできるし、とりっぱぐれも少ないと想像します。
税収をアップしたい政府が考えそうなことです。せこい。
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