リートよ、インフレには強いはずじゃなかったのか!?

一般的に言って、不動産はインフレに強いはず。お金の価値が下がっても土地や建物は生活や事業活動にかかせないからです。
よって、インフレになれば不動産の価格も同様に上昇するというのが教科書どおりの見方ではないでしょうか。
ところが今、世界は教科書どおりには動いてはいません。
リート市場に暗雲立ち込める
世界的にリート市場の時価総額が減少しています。
とりわけ減少率が大きいのがアメリカ市場です。2022年3月末と2021年12月末を比較すると時価総額で6%減少し、リートの価格が下落しています。
アメリカ市場は規模がとりわけ大きく、世界のリート市場の6割以上を占めています。それだけに世界に与える影響は大きい。
ちなみに日本は同時期、時価総額の下落は3%にとどまっています。
いったいアメリカ市場でいったい何が起きているのでしょうか。そして、それは日本市場にも波及するのでしょうか。
債券のほうが魅力的?
アメリカのリート市場がここ最近、軟調に推移しているのにはいくつかの要因があります。
まずは金利動向です。
2022年に入り、アメリカの金利は急激に上昇傾向にあります。

2022年4月20日現在、10年もの長期国債の利回りは2.9%程度にまで上昇しています。
一方で、USリートの予想分配金利回りは3%台の前半であり、差がどんどんと縮まってきています。リスクをとってリートで運用するよりも安全資産である国債で運用したいと思う人が増えるのは当然のことでしょう。
金融引締めから景気悪化へ
また、インフレにともなう金融引締めも懸念材料です。
アメリカの政策金利であるFF金利は2022年に入り0.5%に引き上げられました。

ゴールドマンサックスなどは2022年、FOMCの度に利上げがされるのではないかと予想しており、あと6回利上げがされる可能性があります。
金利が急激に高騰していけば景気の減速は避けられない。景気が悪化すれば不動産の利用も低迷すると考えられます。
景気が悪化する中ではインフレが加速しても、不動産賃料の値上げには結びつきそうもありません。
不景気とインフレの共存、いわゆるスタグフレーションが徐々に進行していると考えられます。
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金利負担アップで収益悪化懸念
3つめの要因として、リートの金利負担上昇が挙げられます。
リートは自己資金のみならず、借入金で不動産物件を取得している。金利が上昇すれば利払い負担が大きくなるため収益悪化要因となります。
収益が悪化すれば投資家への分配金も減少してしまいます。
魅力が薄れて売られるわけですので当然、リートの価格も下がるということになります。
最後に
日本は幸か不幸か、エネルギーや食料品を除けば依然としてデフレが継続しており、アメリカほど金利上昇圧力が強くない。
Jリートの値下がりがUSリートに比べて小さいのは長期国債との利回り格差が依然として大きいからだといえるでしょう。
しかし、その分円が売られる。そして、昨今の日本経済は円安メリットを受けにくくなったという構造的問題があり、痛しかゆしの状態が続いています。
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